2025.02.18NEW

9大学16高校から男女約300人が参加して第3回関西オープン合宿(奈良・天理市)

《練習風景/写真・動画》

 「関西圏大学レスリングのさらなる発展」を趣旨として、関西圏にある大学と高校選手、さらには中学選手も数名加わって一致団結し、2023年にスタートした「関西オープン合宿」が、今年も2月15~17日、奈良県天理市の天理大で行われた。神奈川県から参加の慶大を含めて9大学16高校から男女の約300人が参加。パリ・オリンピック金メダルの日下尚、清岡幸大郎(ともに三恵海運)、ナショナルチームの笹本睦コーチ(日本オリンピック委員会)も参加し、世界最高レベルの指導を受けた。

▲9大学16高校から男女の約300人が参加した関西オープン合宿

《参加大学》
立命館大、帝塚山大、天理大、 桃山学院大、関大、同志社大、大体大、神戸医療未来大、慶大

《参加高校》
大和広陵高、添上高(以上奈良県)、丹後緑風高、京都八幡高、京都海洋高、京都廣学館高、京都日星高(以上京都府)、りんくう翔南高、大体大浪商高(以上大阪府)、和歌山北高、和歌山工高(以上和歌山県)、芦屋学園高、神戸高塚高(以上兵庫県)、岐南工高(岐阜県)、朝明高、松坂工高(三重県)

 スタートの2023年は8大学・13高校から約200人の参加だった。昨年はアジア大会優勝の長谷川敏裕ら三恵海運の選手がコーチ役として参加し、11大学・22高校から約300選手が集結。今年も、両スタイルのオリンピック金メダリストが参加したことで3面半のマットでは足りないくらいの選手が集まり、3日間にわたって実力を磨いた。

 「関西圏の大学のレベルアップと交流を目的に提唱した」という発起人の帝塚山大・鈴木貫太郎コーチは、三恵海運のコーチも務める。同社の髙田肇代表取締役社長(兵庫・育英高~大体大レスリング部OB)がレスリングの発展を願う気持ちが強く、2人のオリンピック代表に加えて吉田ケイワン(2024年全日本選抜選手権優勝=男子フリースタイル97kg級)、髙橋夢大(同2位=男子フリースタイル86kg級)、吉田アミン(2024年全日本社会人選手権優勝=男子グレコローマン67kg級)も派遣。合宿の充実に貢献した。

▲発起人の帝塚山大&三恵海運の鈴木貫太郎コーチ

▲ナショナルチームの笹本睦コーチも参加

関西圏の一致団結で競技人口の減少を防ぎ、発展へ

 「大学選手は冬のこの時期、ともするとモチベーションが上がらない時期なんです。この合宿をすることで気持ちが高まる。高校選手にとっては、全国高校選抜大会(3月27~29日、新潟市)を前に貴重な実力アップの機会」と話す。

 鈴木コーチは、レスリングの東西格差、地域格差は好ましくない状況と考えている。関西の高校の強豪選手は、大学は関東のチームを選ぶことが多いのが現状。西日本学生リーグ戦も周南公立大(山口県)の天下が続いており、関西のチームの奮起が望まれる現実を認識している。

 「大学と高校が交流することによって、関西の高校の選手が関西の大学を選択することも多くなるでしょう」と、この合宿で期待されるプラスアルファの効果を話す。関西圏の一致団結によって将来の道筋をつけ、競技人口の減少を防いで一丸となっての発展目指したいと言う。

▲3面半のマットに熱気があふれた練習

 一致団結の気持ちはあっても、多くのチーム・選手を集めるのは簡単ではないが、南京都高校(現京都廣学館高)で監督をやっていたとき「ゴールデンウイークに22~23校集めて合宿をやった」そうで、そのときの監督仲間が呼応してくれているそうだ。長年の“財産”に助けられ開催できている関西オープン。2人のオリンピック金メダリストの参加を実績とし、来年以降も開催される可能性は十分。

休みなしにスパーリングを求められる2人のオリンピック王者

 日下は「(現役選手なので)指導力はまだまだなんですが…」と謙そんしながら、「グレコローマンはリアル・レスリング。グレコローマンの魅力を伝え、グレコローマンの普及に貢献できればいいと思っています」と話す。スパーリングでは次々に相手を求められ、休むこともできなかったが、「ボクは平気です。ボクを疲れさせる選手が出てきてほしいです」とオリンピック王者の貫禄を見せた。

 関西のレベルが関東よりも劣っていると言われるが、「関西のチームだって、やれますよ」と力説。自らは選手数の少ない香川県でレスリングに取り組み、そこからオリンピック王者に輝いただけに、「伸びしろ」の部分を強調。「レスリングの面白さを伝えたい。ボクを積極的に使い、世界に通じる選手が生まれてほしい」と選手の奮起をうながした。

▲グレコローマンの魅力を教え、普及に努める日下尚

 清岡もスパーリングでは休みなしの“フル稼働”。どんなに疲れていても、オリンピック王者として無様な姿は見せられない、というプライドがあるし、手本にしてほしいという気持ちもあるので、最後の方ではエンジン全開の闘いも。「自分自身の練習にもなります」と言う。オリンピックのあと、こうして後輩選手を指導する機会がなかったそうで、「やっと自分のやってきたことを還元できた、という気持ちです。高校生や中学生と練習し、初心に戻れました」と振り返った。

 技術指導では多くのコーチが動画撮影していた。「一回聞いただけじゃ分からないでしょう(から、いいことです)。しっかり伝わってほしいので、持ち帰って研究してほしい。動画を生かす、生かさないは、その選手次第」と言う。自分の技術の流出を嫌がって動画撮影に拒否反応を示す選手もいないことはないが、「研究されてやられるなら、それだけの選手ということ。対策されて勝てないようなら、ロサンゼルスでの優勝は難しいと思っています」と、王者の風格を見せた。

▲髙橋夢大を相手に世界の頂点に立った技術を教える清岡幸大郎

 神奈川県から参加した慶大の吾田鉄司・新監督(前慶應義塾高監督)は「(練習試合の)団体戦もあるとのことで、いい機会。高校生も多くいるので、いい練習になると思った」と参加の動機を話す。同チームには大学入学後にレスリングを始めた選手も多く、関東の強豪チームとの合同練習では荷が重いので、多くの高校選手との練習を積めるこの合宿で実力を養成することを期待。日程が合えば来年も参加する希望を話した。

▲関東から唯一参加した慶大