2025.01.23

【2025年全日本マスターズ選手権・特集】日体大と国士舘大の争いが再現! …本名栄仁さん(新潟・巻っずクラブ)・佐藤将章さん(三恵海運、京都・廣学館高教)

 

 30歳以上の現役選手が集う全日本マスターズ選手権(昨年までは35歳以上)は、かつてマット上で火花を散らした選手の“同窓会”といった雰囲気もある。もちろん、闘いは真剣勝負。

 1990年代中盤と言えば、強大な“日体大王国”に国士舘大や日大が迫り、その牙城を崩した時代。2025年大会で、その時代の日体大と国士舘大のトップ選手同士の顔合わせが実現したのがDivisionC(46~50歳)78kg級決勝。日体大のフリースタイル主将としてチームをけん引した本名栄仁さん(新潟・巻っずクラブ)と国士舘大主将としてリーグ戦の打倒日体大を果たした佐藤将章さん(三恵海運、京都・廣学館高教)が、約27年8ヶ月ぶりに対戦した。

▲かつての敵は、今日の友-。1997年東日本学生リーグ戦以来、27年8ヶ月ぶりに闘った佐藤将章さん(左)と本名栄仁さん

一日の長を見せて宿敵に勝利…本名栄仁さん(新潟・巻っずクラブ)

 結果は、2019年の全日本選手権に44歳にして出場し、この大会は9大会連続12度度の優勝を誇る本名さんがテクニカルスペリオリティ勝ち。“一日の長”を見せ、昨年12月の全日本選手権で初優勝した長男・一晟(育英大)に父親の威厳を見せた。

 両者は高校時代からのライバル関係。そのときは京都・南京都高の佐藤さんが新潟・巻農高の本名さんに2戦2勝とか。

 大学では階級が変わったこともあってしばらく対戦はなかったが、4年生(1997年)の東日本学生リーグ戦69kg級で佐藤さんが階級を上げて激突。本名さんが辛勝した。同年の全日本学生選手権は、佐藤さんが63kg級、本名さんが69kg級で優勝している。

 本名さんは「(佐藤さんが)出てくるとは思っていなかった。彼には高校時代に勝ったことがないんです。昔のイメージが残っていて不安でした」と、スコアは快勝でも必死の闘いだったことを強調。

 1回戦で闘った浜口剛志(浜口道場=浜口京子さんの弟)が「力が強く、研究されていたみたいで思うように闘えず、スタミナを出し切ってしまいました。体力を温存して決勝に臨むつもりだったのですが」と想定外の苦戦をしいられており、それもあってかなり厳しい闘いだったようだ。

▲グラウンド技もさえて本名さんが快勝、この大会12度優勝で実力を見せた

 しかし、それらを乗り越えて勝ったこと以上に、かつてのライバルとこうして闘えたことが「うれしいですね」と笑顔。勝敗を超越した闘いができたことが、楽しそうだった。

25年ぶりの実戦を飾れず闘志が沸いた佐藤将章さん(三恵海運、京都・廣学館高教)

 佐藤さんは「悔しいですね」と第一声。大阪府のマスターズの大会に出たことはあるが、全日本レベルの大会への出場は2000年の全国社会人オープン選手権以来、約24年3ヶ月ぶりとのこと。高校選手と毎日練習はしているが、実戦となると違うようで、ましてこの大会12度優勝の選手が相手では荷が重かったようだ。

 セコンドについたのは、高校時代の監督でもあった鈴木貫太郎・三恵海運コーチ。当時は監督の厳しい視線が怖くて必死で闘い、負けて戻るとすぐにブリッジをやらされる“罰”もあった。そのときと同じ視線をひしひしと感じ、「負けるわけにいかない、という気持ちは最後まで持ち続けていた」そうだ。

▲高校時代の恩師、鈴木貫太郎・三恵海運コーチの厳し視線のもとで闘う佐藤将章さん

 負けると闘志が沸いてくるのは昔と変わらない。「もっと練習して、来年こそは優勝したい」とリベンジ宣言。70kg級には、高校・大学と同じ階級の伊東克佳さん(グロリア=茨城・霞ヶ浦高~日大、この大会の70kg級優勝)がいて、階級を下げても一筋縄では勝てない状況。それだけに、今後の練習にも力が入りそう。

 伊東さんのほか、58kg級優勝の楳沢智治さん(SPIDER=栃木・足利工大附高に三冠王~日大)も同期で、大学時代は打倒日体大に燃えた同志。同期生の切磋琢磨でさらに燃える闘いが展開されそうだ。

 本名さんは、最近、50歳代で全日本選手権に出場している選手がいることをふまえ、全日本選手権へ挑戦し、昨年の男子フリースタイル70kg級で3位になった次男・帝心(育英大)との親子対決を目指す気持ちも、少しあるもよう。社会人の大会で出場資格を取らねばならず、「きょうの闘いでは厳しいでしょう」とは言うものの、可能性があるのなら、どう展開するか分からない。

 いろんな輪が広がる全日本マスターズ選手権。来年も、多くの輪ができることが期待される。

▲元プロ格闘家の宮田和幸さん(右端)も応援で来場しており、同期生で記念撮影。左から佐藤将章さん、伊東克佳さん、本名栄仁さん=佐藤さん提供

▲1993年全国高校選抜大会63kg級表彰式。優勝が伊東克佳さん、左が2位の佐藤将さん、右端が3位の本名栄仁さん