2025.01.17

パリ・オリンピック代表チームが受賞…2024年日本スポーツ大賞・特別賞

 

 1951年にスタートした伝統ある日本スポーツ賞(読売新聞社制定)の2024年受賞者の表彰式が1月16日、都内の「The Okura Tokyo」(オークラ東京)で行われ、特別賞を受賞したパリ・オリンピック・レスリングチームから5選手と2人のコーチが出席。表彰状などを受け取った。

 レスリングが、各競技団体推薦によって決まる競技団体別最優秀賞を飛び越えての賞を受賞するのは、昨年、奨励賞を受賞した藤波朱理(日体大)に続いて2年連続。表彰のあと、各選手が受賞の喜びなどを話し、その後、今後の活動計画などを明らかにした。

2月23日に米国での「プロ大会」に出場…高谷大地(自衛隊)

 チーム最年長で、「いつの間にかキャプテンと呼ばれた」という男子フリースタイル74kg級の高谷大地(自衛隊)は、2月23日に米国・アイオワ州で行われるワンマッチ・イベントで全米大学(NCAA)選手権2度優勝のデービッド・カー(米国)と闘うことが決まっている(関連記事)。

 米国では、レスリングの大会がプロレスやプロ格闘技のような“興行”として行われることがある。プロレスとは違う「プロのレスリング大会」。高谷の出場する大会のメーンイベントには、昨年の61kg級世界王者の小野正之助(山梨学院大)とパリ・オリンピック57kg級銀メダルのスペンサー・リー(米国)の一戦が組まれている。高谷は当面、「海外で開催されるこうした大会に出てみたい」と、新たな闘いにチャレンジする計画を話した。

 強豪と闘うだけではなく、大会を盛り上げるために必要な運営や米国のレスリング人気の秘密なども吸収したいと言う。「経験することで、ビジネスチックなことを学び、レスリングの広報に役立てたい」と、オリンピック後に手掛けてきたレスリングを人気スポーツにする闘いに、さらに力を入れる腹積もり。

 日本でのトーナメント大会には「もう出ない」ということではなく、気持ちが盛り上がれば出場する予定。ただ、若手が台頭してきているので「今年は(出なくて)いいかな、と思っています」と話し、当面は若手の成長を見守る側に回る予定。

▲2月23日に米国で行われるワンマッチ・イベントへの出場が決まった高谷大地

「もぐら叩きの要領で、世界を勝ち続ける」…日下尚(三恵海運)

 昨年秋にドイツのブンデスリーガの試合に参加し、マット復帰を果たしている男子グレコローマン77kg級の日下尚(三恵海運)は、6月に予定されている明治杯全日本選抜選手権へ出場することを明らかにし、「敷かれたレールを歩きます」と明言。“敷かれたレール”とは、今年の世界選手権で優勝し、来年のアジア大会でも優勝して、ロサンゼルス・オリンピックで2連覇を達成すること。オリンピックまでの3度の世界選手権も「すべて出ます」と、戦闘モード十分。

 大きな目標を突破したので、このあとは強さを突き詰めていくことを目標にするほか、まだ世界選手権のベルトは手にしていないので、「今年はそのベルトを手にします」と言う。

 多くの選手から研究されることが予想され、「いろんな壁にぶつかるとは思う」とは言うものの、「マットに立ったら殺し合いだ、という気持ちで闘う」ときっぱり。自身がそうだったように、ぽっと出の選手が出てくることも想定しているが、「(ゲームの)もぐら叩きの要領でやっていきます」と饒舌(じょうぜつ)に話した。

▲ドイツで選手活動を再開している日下尚。今年は世界選手権優勝が最大の目標

「まだ力を伸ばせる」と現役続行の文田健一郎(ミキハウス)

 男子グレコローマン60kg級の文田健一郎(ミキハウス)はオリンピックのあと休養を続けていたそうだが、翌日(17日)から練習を再開することを明らかにした。「現役引退とかは全然考えていない。過去の自分に負けることは、まだ考えられない。まだまだ力を伸ばせると思っている」と話した。

 目標だったオリンピックの金メダルは達成したが、「レスリングとしっかり向き合えるのは、これから。もっと強くしていきたい」と、世界で勝つモチベーションは消えていないことを強調した。ただ、今年6月に予定されている明治杯全日本選抜選手権は、「(調整が)間に合わないでしょう」として出場しない見込み。

▲授賞式の翌日から練習再開の文田健一郎。チームを代表して賞状を受け取った


(以下、表彰のあとのステージでのあいさつ)

 ■男子グレコローマン60kg級・文田健一郎(ミキハウス)「レスリング・チームはパリ・オリンピックに13人が出場し、11人がメダルを獲得、8人が金メダルを獲得することができました。レスリングは個人競技ですが、これだけの成績を出せたのは、13人がチームとして闘った結果だと思っています。パリ・オリンピックはすでに過去のことになりました。(ロサンゼルスへ向けて)個人としてもそうですが、チームとして頑張り、パリを超えられるように頑張っていきます」

 ■男子グレコローマン77kg級・日下尚(三恵海運)「パリ・オリンピックの前は、オリンピックで優勝してスターになってやるぞ、という気持ちでした。自分が優勝したあと(注=チーム最初の優勝は文田健一郎)次々に優勝して、見事に埋もれてしまいました(会場大爆笑)。次のオリンピックでは、そうなっても埋もれないようにトークを磨いてスターになりたいと思います」

 ■男子フリースタイル74kg級・高谷大地(自衛隊)「レスリングで唯一の銀メダリストの高谷ですが、このメダルはとても誇らしいもので、日本チームとして闘えたことを誇りに思っています。(指名されたわけではないが)みんなが『キャプテン』と言ってくれました。特にコントロールはしてこなかったのですが、みんな楽しく明るくやってきました。4年に1度だけの注目にならないよう、オリンピックのあとは全国を飛び回り、子供達にレスリングを教え、レスリングの魅力を発信しています。これからもレスリングを応援してください」

 ■女子57kg級・藤波朱理(日体大、下写真)「これから新しい目標へ向けて進みます。レスリングがもっと注目してもらえるように、頑張っていきたいと思います」

▲あいさつする藤波朱理

 ■女子76kg級・鏡優翔(サントリー、下写真)「自称ではなく、本当にレスリング界のアイドルの鏡優翔です(会場から大きな拍手)。私もレスリング界の発展のため、こらからも頑張ります。発展のためにちびっ子たちの指導にも力を入れています。レスリングはルールが難しいのですが、直接見たら面白い競技であることが分かると思います。ぜひ会場に足を運んでください」

▲あいさつする鏡優翔