2024.12.18

初の高校生・全日本2大会制覇なるか…2024年全日本選手権、注目される記録の数々

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 

吉田泰造(香川・高松北高)が高校生王者へ挑戦

 昨年大会の男子グレコローマン82kg級で2位だった吉田泰造(香川・高松北高)が、今年こその高校生王者に挑戦する。

 過去、男子で高校生王者に輝いた選手は3人で、グレコローマンでは1人。吉田は5月の全日本選抜選手権で優勝しているので、勝てば高校生での初の全日本2冠王者となる(ただし、松橋義行、石嶋勇次の時代は、全日本選抜選手権は行われていなかった)。

 吉田はシニアのアジア選手権で優勝し、世界選手権でも5位に入賞するなど実力は十分。快挙達成なるか。

【過去の男子の高校生・全日本王者(年齢順)

No. 選手名 所  属 年  齢 階  級
1 石嶋勇次 茨城・霞ヶ浦高 17歳1ヶ月7日 1989年 フリースタイル52kg級
2 金澤孝羽 東京・自由ヶ丘学園高 17歳4ヶ月9日 2022年 グレコローマン55kg級
3 松橋義行 青森・八戸電波工高 17歳9ヶ月10日 1970年 フリースタイル48kg級

▲世界へ飛躍している吉田泰造。高校生としての全日本王者なるか=2024年世界選手権、撮影・保高幸子


天野雅之(学校法人中央大学職員)が歴代3位タイの18度目の出場へ

 男子グレコローマン97kg級にエントリーした天野雅之(学校法人中央大学職員)がマットに立てば、18年連続18度目の出場となり、男女を合わせ、吉田沙保里と並ぶ歴代3位の記録へ。グレコローマンに限れば、自身の持つ最多記録を更新する。同選手は優勝2度を含めて12度、表彰台に登っている。

 男子フリースタイル86kg級にエントリーした高谷惣亮(拓大職)が出場すれば16年連続17度目の出場となり(2008年大会にもエントリーしていたが、計量棄権で出場していないので除く)、歴代5位タイの記録となる。

【全日本選手権の出場回数上位選手(2023年まで)】

No. 選 手 名 回数 階    級
1 柴田 寛 22回 男子フリースタイル74・76・84・86kg級
2 浜口京子 19回 女子70・75・72kg級
3 吉田沙保里 18回 女子51・56・55・53kg級
4 朝倉利夫 17回 男子フリースタイル52・57kg級
清水真理子 女子61・65・56・59kg級
天野雅之 男子グレコローマン84・85・97kg
7 笹本 睦 16回 男子グレコローマン58・60・66kg級
村田知也 男子グレコローマン48・54・55kg級
高谷惣亮 男子フリースタイル74・79・86・92kg級
井上智裕 男子グレコローマン66・74・71・77・72kg級

▲出場回数の歴代3位タイへの浮上がかかる天野雅之。13度目の表彰台で飾れるか


年長出場記録への挑戦、54歳の川口智弘(三重・松坂クラブ)

 男子グレコローマン60kg級に、昨年に続いて川口智弘(三重・松坂クラブ)がエントリー。22日のマットに立てば、昨年樹立した歴代2位の「53歳10ヶ月16日」を更新し、「54歳10ヶ月15日」での出場となる。

 2年前までなら最年長の出場記録に該当する年齢だが、昨年、元国体王者の土屋健(静岡・長泉ファイティングエンジェルス)が「59歳7ヶ月1日」で出場しており、これが最年長出場記録となっている。

【全日本選手権・年長出場記録】

No. 選 手 名 所   属 年  齢
土屋 健 静岡・長泉ファイティングエンジェルス 59歳7ヶ月1日 2023年
川口智弘 三重・松坂クラブ 53歳10ヶ月16日 2023年
浅川享助 山梨・北杜クラブ 52歳0ヶ月13日 2023年

▲昨年に続いてエントリーした川口智弘。五十路の意地を見せられるか=2023年全日本選手権、撮影・矢吹建夫


50年間生まれていない両スタイル同時優勝の選手は生まれるか?

 今大会、男子で両スタイルにエントリーした選手は20人。昨年、掛川零恩(早大)がフリースタイル92kg級で銀メダル、グレコローマン82kg級で銅メダルを獲得したが、これは1973年に吉田光雄(専大=プロレスラー長州力)が両スタイルで優勝して以来、50年ぶりに達成した両スタイル同時メダル獲得選手。

 全日本選手権の両スタイル出場は、両スタイルが別日程で行われていた時代(一連の大会で実施され、前半と後半でスタイルが分かれていた大会を含む)には珍しいことではなく、1968年には藤本英男(日体大・元監督)も達成している。両スタイルが混合で行われるのが普通になってからは、日程の問題や、選手の間に両スタイルには出られない、といった空気があり、1984年の朝倉利夫(国士舘大・現部長)以来、いなかった。

 2022年にフリースタイルで世界王者になった成國大志(MTX GOLDKIDS)が、全日本社会人選手権グレコローマン優勝の実績をもって両スタイルにエントリー。大学の大会で両スタイルの出場資格を得た向田旭登(専大)も両方に名を連ね、38年ぶりの出来事が起きた。このときは両選手とも負傷欠場だったが、2023年全日本選抜選手権で二宮健斗(日本文理大)山田脩(日体大)が出場し、ともにメダル1個を獲得。

 以来、可能性にかける選手が増え、昨年の大会は18選手が両スタイルにエントリー。一気にトレンド化した。同じ日に試合があって、出場する試合が重なったり接近していても一切の考慮はなく、以前よりも難しくなっているが、1973年以来の両スタイル王者は誕生するか。

▲昨年、50年ぶりに全日本選手権の両スタイル・メダル獲得を達成した掛川零恩。両スタイル金メダルはだれが達成するか=撮影・矢吹建夫


3兄弟での快挙なるか、吉田アミン(三恵海運)・アラシ(日大)・アリヤ(JWA)

 兄弟や姉妹、姉弟、兄妹で全日本選手権に同時出場を果たす例は珍しくない。今大会は吉田アミン(三恵海運=男子グレコローマン67kg級)、吉田アラシ(日大=男子フリースタイル97kg級)、吉田アリヤ(JOCエリートアカデミー=男子フリースタイル70kg級)の3兄弟、小柴亮太(佐賀県庁=男子グレコローマン63kg級)、小柴伊織(日体大=男子フリースタイル74kg級)、小柴ゆり(佐賀・鳥栖工高=女子59kg級)の3兄妹がエントリーした。

 3人の姉弟妹の参加としては、2004・05・07年に坂本日登美・将典・真喜子が同時出場した記録が残っている。3兄弟での出場は、大会史上初めてと思われる。次兄の吉田ケイワン(三恵海運=男子フリースタイル97kg級か125kg級)も出場資格を持っていたが、負傷のためエントリーせず、4兄弟での出場は来年へ持ち越しとなった(妹もレスリング選手なので、5人での同時出場の可能性もある)。

 少子化の時代、3兄弟、あるいは4兄弟(男女を含む)での出場自体、そう多く起こることではない。同時メダル獲得となれば、永久に残る記録となるだろう。

▲全国社会人オープン選手権で優勝し、全日本選手権の出場資格を取った吉田アミン(三恵海運)。3兄弟での活躍なるか