2024.12.06

【2024年全国中学選抜選手権・特集】“野獣魂”を受け継いで初の全国チャンピオンへ! 姉妹で世界を目指す…女子66kg級・藤田紫(千葉・市川コシティクラブ)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 

 “野獣姫”の姉妹が、女子重量級を席巻する日がやってくるか-。11月30日~12月1日に行われた2024年東京都知事杯全国選抜U15選手権の女子66kg級で、プロレスラーの藤田和之(プロレスリング・ノア=日大卒)の次女、藤田紫(千葉・市川コシティクラブ)が優勝。初の全国チャンピオンに輝いた。

 姉の藤田眞妃琉(群馬・前橋育英高)は今夏のインターハイ74kg級で1年生チャンピオンに輝き、全日本女子オープン選手権U17-73kg級でも優勝しており、姉妹で女子重量級に旋風を巻き起こす可能性が出てきた。

▲初の全国チャンピオンに輝いた藤田紫(千葉・市川コシティ)と父・和之さん(プロレスリング・ノア)

 藤田は「クラブや家族に感謝しています。とてもうれしいです」と話し、支えてくれた人たちへの感謝の言葉で優勝インタビューをスタート。1-1で終わった決勝の最後は、バックへ回ろうとする相手の攻撃を必死になって防いでの勝利。「ここでポイントを取られたら(優勝という)目標を達成できず、泣いて終わってしまう」という一心でこらえたそうで、「(しのげた要因は)気持ち?」という問いに、「気持ちでしたね」と答えた。

 相手の石井優奈(大阪・堺ジュニア)は、66kg級で今年4月のジュニアクイーンズカップU15と6月の沼尻直杯全国中学生選手権を連続優勝した強豪選手。藤田はその2大会とも62kg級3位で、小学時代から通じて全国制覇の経験がない。ただ、66kg級へ上げた初戦となった10月の全日本女子オープン選手権は準決勝で石井と対戦し、フォール勝ちするなど成長を見せていた(決勝はU15アジア選手権2位の高校選手に敗れて2位)。

 勝ったことによる精神的優位があると思われたが、相手はリベンジを目指してくるから簡単には勝てない。第1ピリオドは攻めあぐみ、アクティビティタイムで1点を失って出足はよくなかった。第2ピリオド、今度はアクティビティタイムで1点を返したが、ラスト10秒にバックへ回られそうなピンチ。ここを必死に守り切って白星を引き寄せた。

▲終了間際、石井優奈(赤)のゴービハイド(バックへ回る)狙いを、石井の右脚を離さずに防ぎきった藤田紫=撮影・矢吹建夫

目標は1年生高校チャンピオンに輝いた姉・眞妃琉(群馬・前橋育英高)

 姉の影響で小学3年生から始めたレスリング。小学生時代の全国大会でのメダルは5年生のときの1度だけ。今年になってこそ全国3位や2位があったが、中学1年生だった昨年は「1回戦負けが多かった」と言う。「やはり悔しかったです」という思いが飛躍につながった。

 姉の活躍に刺激されたことは言うまでもない。父からレスリングをやることを強制されなかったこともあり、姉も小学生時代はこれといった記録は残していない。初めての全国チャンピオンが中学2年生になったばかりのジュニアクイーンズカップ。その後、中学チャンピオンとなり、1年生インターハイ・チャンピオンになるまでの実力をつけた。

 そんな姉の飛躍は、「続きたい」と思わせるに十分な刺激材料。群馬の高校に行ったため練習することは少なくなったが、「目標とする選手は?」との問いに「姉」と即答。「力があってテクニックもあるところを見習いたい」と、姉の存在が躍進の原動力だ。

▲今夏、1年生インターハイ・チャンピオンに輝いた眞妃琉(群馬・前橋育英高)=撮影・成國琴音

オリンピック出場を目指した闘いが始まる

 父は日大時代に全日本学生選手権4連覇などを達成して全日本王者へ。1996年アトランタ・オリンピック出場をあと一歩で逃したあと、プロレスとプロ格闘技で大活躍。その強さをもって「野獣」と言われ、アントニオ猪木さんの闘魂の「最後の継承者」とも言われた。

 新日本プロレス~フリーでの活動を経て、2022年2月にノアに入団。会見では、生活が安定することで「3人の子の親として(注=長男・親伯も今大会に出場し75kg級で3位入賞)、野獣ではなく人間として生きていきたい」と神妙に話したが、その後のリング上の闘いは、はやはり「野獣」-。

 最近は、桃山学院大OBのマサ北宮(本名・北宮光洋=2010年西日本学生王者)とファンの度肝を抜く壮絶な闘いを展開。野獣の魂は消えていない。

 父としてはノア入団前からおだやかだったようで、藤田は「厳しい父親ではなかったです」と振り返る。ただ、自分が本当にレスリングに打ち込みたいと思ったあとは「厳しくなりました」と話した。

 レスリングに目覚めた子供に“野獣魂”が注入されるのはこれから。父が達成できなかったオリンピック出場を目指し、“野獣姫”姉妹が飛躍する。

▲初の全国制覇を達成し、世界を目指す藤田紫(青)=撮影・矢吹建夫