※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2023年全日本大学選手権の57kg級は、昨年の学生王者の佐々木風雅(日大)が優勝。今年は8月の全日本学生選手権で2位、61kg級に出場した鹿児島国体でも2位と、あと一歩が続いており、「その分、この大会にかけてきたので、本当にうれしいです」と喜びを表した。
決勝の相手は、団体優勝のために負けられない立場だった弓矢暖人(日体大)。お互いにテクニカルポイントが取れない競った試合だったが、第1ピリオドの終了間際に佐々木が弓矢を場外に出した1点が貴重なポイントとなり、最後は2-1で辛勝(アクティブティ・タイムによるポイントは1点ずつ)。リードを奪ったあとの約2分間、逃げる姿勢はまったく見られず、グレコローマン的な差しを中心に前に出ることを崩さなかった闘いで逆転を許さなかった。
長野・上田西高時代には国体のグレコローマンで優勝した実績があり、今夏の全日本学生選手権はグレコローマンにも出場(60kg級で5位)。グレコローマンの技術も養って闘いの幅を広げたことが、勝因のひとつだったかもしれない。
弓矢はチームの優勝がかかっていただけに、「気合がすごかったのでは?」との問いに、「負けられないのは自分も同じです。チームのポイントを少しでも上げるため、優勝しなければなりませんでした」ときっぱり。団体優勝は遠のいていても、チームのため、何よりも自分のために、「負けられない」という気持ちが強かったことを強調した。
昨年のこの大会は、準決勝で暖人の弟の健人(日体大)に1点差で敗れて1年生王者を許し、今年の全日本学生選手権決勝でも、健人にやはり1点差での惜敗。「本当に悔しい思いをしました」と振り返る。
弟を退けて日体大代表で出てきた兄を破って、いくらかでも悔しさは払しょくされたか? 壁を乗り越えられたのは、「監督やコーチがいい技術指導をし、適切な練習メニューをつくってくれたからだと思います」と言う。
来春の卒業後もレスリングを続けられる環境が得られそうで、このあとの目標は2028年のロサンゼルス・オリンピック。現段階では、「全日本で通用するレベルには、まったく届いていないと思います」と、自身の実力を冷静に見つめている。学生最後の大会での優勝を機に、「(ロサンゼルス大会までの)4年間、しっかり練習し、レベルを上げていきたい」と話した。