※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
昨年秋季に一部リーグ最下位となり、二部リーグからの再スタートとなった福岡大が、2023年西日本学生春季リーグ戦の同リーグで5戦全勝をマーク。1季で一部へ返り咲いた。最終戦は帝塚山大との一戦。開始から3連勝と好調だったが、そこから3連敗。しかし、最後の70kg級で昨年の西日本学生選手権3位の吉田海耶がテクニカルフォール勝ちし、チームの勝利を決めた。
長島和幸監督は「結果的に4-3で勝ちましたが、冷や冷やする内容。(秋季に)一部リーグで闘うには、まだ実力不足。今回の反省をふまえ、強化していきたい」と厳しく振り返った。チームスコア3-0から3-3に追い上げられたときは、「厳しいなあ」と感じたそうだが、最後に控えている吉田が期待できるだけの実力を身につけているので、「大丈夫だろう」という気持ちはあったと言う。
ただ、「試合はやってみないと分かりませんから」とも話し、流れに乗られる場合もあるので、最後まで気が抜けなかったというのが正直なところ。3連勝でも安心せず、4試合目、5試合目でチームの勝利を決めるように「1試合ずつ大事に闘ってほしい」と要望した。
一部リーグで28度の優勝を誇る伝統大学。二部リーグで闘う自体が不本意なことで、それは長島監督も否定しなかった。しかし、「昨年秋季に一部の最下位になったのは事実。それが今の実力」と受け止め、はい上がる努力をしてきた。大会の直前のゴールデンウィークは東京まで行って中大の胸を借り、実力アップをはかった。
試合前は食事やメンタル面での指導にも力を入れ、コンディショニングにも最善の努力をして臨んだ大会。「結果を出せたことはよかったです」と、この優勝を受け止めた。
実力アップの要因のひとつに、隣県ではあるが30kmしか離れていない佐賀・鳥栖工業高校との練習の成果も挙げる。高校の一大勢力となっているチームで、大学選手には「高校生相手には負けられない」という意地が芽生えるし、中には大学選手が学ぶべき技量を持っている選手もいる。
そうした交流によって、同高の選手の中に福岡大を目指す選手もコンスタントに出ているそうで、最終戦でチームの勝利を決めた吉田もその卒業生。大学の練習が休みの日に一人で母校に練習に行くこともあるという。全国一を目指す“鳥栖工イズム”が福岡大にも浸透しており、それがいい形で出たようだ。
福岡大のベンチには、前回一部リーグで優勝したとき(2018年春季)の監督だった池松和彦氏(2004年アテネ・2008年北京両オリンピック代表=日体大卒)の姿が。今年1月、福岡県筑前町議会議員選挙に、「和を以て貴しとなす」をスローガンに出馬。14人の立候補者の中の5位で当選。今回は“政治家”として、チームのアドバイザーという立場での参加だ。
「リーグ戦に来るのは久しぶりです。学生が頑張ってくれました」と言う。優勝経験監督として、「二部リーグで闘っているのを見るのは、不本意なのでは?」との問いに、「いま、西日本のレベルは高いですから…。これからしっかり頑張ればいいと思います。今が頑張り時だと思います」とエールを送った。
入れ替え戦なしで一部と二部が入れ替わるのが、西日本学生リーグ戦の方式。上がったはいいが、一部で最下位になれば、またこの位置に戻ってしまう。「一部で優勝を目指す、という気持ちが必要。最下位を逃れれば、という気持ちでは、すぐに戻ってしまう」と力をこめる。
コロナ禍で中断されていた韓国遠征が、今夏から復活できるかどうかは分からない。その場合は、今春のように東日本の大学に挑むことで伝統復活への気持ちを話した。