※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2024年パリ・オリンピックでのロシアとベラルーシの参加をめぐって動きが慌ただしくなる中、4月17~24日にクロアチア・ザグレブで行われた2023年欧州選手権で、ロシアからギリシャに国籍を移した選手が優勝した。
ロシアのウクライナ侵攻によって国際オリンピック委員会(IOC)がロシアとベラルーシを国際大会から除外したあと、国籍を変えて国際大会に出場したロシアのレスリング選手は初めて。
優勝したのは、男子フリースタイル86kg級のダウレン・クルグリエフ(30歳)。ロシア・マハチカラ生まれで、2015年頃から国際舞台で台頭。2017年に「ヤリギン国際大会」(ロシア)や欧州選手権で優勝し、2018年世界選手権5位。2019年には欧州大会も制した。
2020年10月のロシア選手権や個人戦ワールドカップ(セルビア)でも優勝。しかし、東京オリンピックの代表選考の重要な大会だった翌年3月のロシア選手権では2019年世界3位のアルトゥール・ナイフォノフに敗れ、オリンピック出場を逃した。2022年は「ヤリギン国際大会」で優勝したものの、ロシア選手権は3位に終わっていた。同年12月にキルギス・ビシュケクで行われた「ポッドブニー・リーグ」(PWL)ではロシアの選手として出場している。
ロシア王者のナイフォノフには勝てないと思ったのか、ロシア国籍ではオリンピックに出場できないと判断したか、それ以外の理由であるかは不明だが、ロシアを離れ、今年の欧州選手権には「ギリシャ」で出場。5試合を総スコア37-2(テクニカルフォール2試合)で勝ち抜いた。ロシア協会のミハイル・マミアシビリ会長は、ロシア国営テレビでクルグリエフのギリシャ国籍への変更を容認したことを明らかにしている。
世界レスリング連盟(UWW)は、IOCが各競技団体に提案・勧告した参加条件の下でロシアとベラルーシ選手の競技への復帰を認めることを今月の理事会で決めた。しかし、「軍に所属する選手については認めない」などの規定がある。ロシアのレスリング界は軍隊に所属する選手も多く、この提案がパリ・オリンピックで実行されるとしても、だれもが出場できるわけではない。
現在のUWWの規程では、12月1~31日が国籍変更の手続き期間。国籍を変えても、オリンピック予選には元の国で世界選手権や大陸選手権などの大会に最後に出場してから3年経たないと出場できないなど細かな規程があるが、それらをクリアしていてパリ・オリンピックを目指すロシア選手が、クルグリエフに続く可能性がある。