※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
男子フリースタイルと女子の2022年ワールドカップは12月10日(土)~11日(日)に米国・アイオワ州コーラルビルで行われる。大会が開催されるのは3年ぶり。日本の女子は2014年大会以来、6大会連続優勝を目指す。
日本の予選1回戦はモンゴルが相手。今年の世界選手権のメダリストが軒並みエントリーしている。62kg級には、副でのエントリーだが、2017年世界選手権63kg級優勝のオーコン・プレブドルジがエントリーしてきた。2016年1月にヤリギン国際大会(ロシア)で伊調馨に土をつけ、2018年アジア大会(インドネシア)では川井梨紗子を破った選手。その大会後のドーピング検査で陽性と認定され、4年間の出場停止処分を受けた。
今秋、処分が明けてマットに復帰。11月のビル・ファーレル国際大会(米国)で優勝した。現在、28歳。2024年パリ・オリンピックへ向けて再浮上する可能性を秘めており、動向が注目される。
予選2回戦はBYEのあと、3回戦でウクライナと対戦する。今年2月から戦禍に見舞われ、練習もままならないウクライナだが、欧州選手権やU23世界選手権などで結果を残しており、底力を見せている。米国協会の招待で12月2日には米国へ入り、コロラドスプリングズで事前練習を行っている。世界選手権代表がずらりとそろっており、あなどれないチームだ。
予選2試合の見どころをさぐった。
《展望》モンゴルは多くの階級で日本選手を上回る実績を持つ。50kg級と53kg級は、ともに世界2位の選手が出てくることが予想され、厳しい闘いとなりそう。櫻井、片岡が日本の底力を見せられるか。ともに屈してしまった場合、55kg級でU20・U23世界選手権を制した清岡もえが勢いを止められるか。
米国レスリング協会は、「最後の4階級でチームの勝利が決まる」と、勝負は重量級の勝敗次第と予想している。
【50kg級】櫻井はなの(育英大)- Dolgorjav, Otgonjargal or Tsogtochir, Namuuntsetseg
2017・19年世界カデット(現U17)選手権優勝で、今年の全日本女子オープン選手権優勝の櫻井が、世界選手権で昨年3位、今年2位のオトゴンジャルガル・ドルゴルジャフの壁を破れるか。東京オリンピック代表で今年のアジア選手権2位のナムンチェチェグ・チョグトオチルが出てきても、櫻井にとっては今後の飛躍の試金石となる一戦。
【53kg級】片岡梨乃(早大) - Batkhuyag, Khulan or Nandintsetseg, Anudari
今年の世界選手権2位のフラン・バチュヤグを相手に、2020年クリッパン女子国際大会(スウェーデン)優勝の実績を持つ片岡が上回れるか。2年10ヶ月ぶりの国際大会、世界トップ選手を相手に飛躍につねがたいところ。
【55kg級】清岡もえ(育英大) - Bat-Ochir, Bolortuya or Ganbaatar, Otgonjargal
U20とU23の世界選手権を制して世界へ飛躍中の清岡が、東京オリンピック53kg級3位のボロルツヤ・バトオチルの壁を破れるか。バトオチルは今年、世界選手権の出場は逃したものの、53kg級でヤリギン国際大会(ロシア)と2度のUWWランキング大会を制した実力を持つ。
【57kg級】屶網瑠夏(至学館大) - Erdenechimeg, Sumiya or Baterdene, Erdenesuvd
2019年世界カデット選手権優勝で今年のU20世界選手権を制した屶網が、2016年リオデジャネイロ・オリンピック53kg級代表で32歳のベテラン、スミヤ・エルデネチメグに挑む。昇り調子をぶつけられるか。今年の世界選手権59kg級5位、21歳のエルデネスブド・バテルデネであっても、屶網の今の勢いをもって乗り越えたいところ。
【59kg級】德原姫花(自衛隊) - Erkhembayar, Davaanchimeg or Khurelkhuu, Bolortuya
U23世界選手権で初の国際大会優勝を飾った德原が、昨年の世界選手権57kg級3位、今年は5位だったダバーチメグ・エルヘンバヤールに挑む。シニアの世界トップ選手を相手に実力が試される一戦。
【62kg級】坂野結衣(警視庁) - Sukhee, Tserenchimed or Purevdorj, Orkhon
チェレンチメド・スヘーは2014年世界選手権60kg級に19歳で優勝した選手。今年は62kg級でヤリギン国際大会(ロシア)とヤシャ・ドク国際大会(トルコ)で優勝し、世界選手権にも出場と実力をキープ。U23世界選手権を制しているチーム最年長の坂野が、どう挑むか。副でエントリーされているオーコン・プレブドルジ(前述)が出場してくるか。
【65kg級】今井海優(自衛隊) - Ulzisaikhan, Purevsuren or Baatarjav, Shoovdor
2018年世界ジュニア(現U20)選手権優勝の今井が、同年のU23世界選手権2位で今年の世界選手権代表のプレブスレン・ウルジサイハンに挑む。昨年の世界選手権59kg級3位のショーブドール・バータルジャフであっても強敵だが、国際大会での実力を示したいところ。
【68kg級】小林久美(福岡大) - Enkhsaikhan, Delgermann or Ganochir, Urtnasar
今年のU20アジア選手権で初の国際大会を経験した小林が、世界選手権代表のデルゲルマン・エンフサイハンに挑む。2017年にワールドカップのモンゴル代表になっているウルトナサル・ガノチールであっても強敵。どこまで食いつけるか。
【72kg級】藤倉優花(育英大) - Enkhamar, Davaansan or Bayarbaatar, Sarnai
U20アジア選手権優勝の藤倉が、2019年世界軍隊選手権68kg級3位のダバーンサン・エンハマールに挑む。シニアの国際舞台で通用する実力が試される一戦となろう。
【76kg級】山本和佳(至学館大) - Ganbat, Ariunjargal or Naigalsuren, Zagardulam
2019年世界カデット(現U17)選手権3位で今年U20アジア選手権優勝の山本が、世界選手権代表のアリウンジャガル・ガンバトに挑む。シニア初の国際大会を飾れるか。副のザガルデュラム・ナイガルスレンも昨年の世界選手権代表選手。
※A組予選2回戦は、ウクライナ-モンゴル
《展望》10選手中、9選手が今年の世界選手権代表。戦禍で練習もままならない中、メダル3個を取って、国別対抗得点で5位に入った底力を相手に、日本の若いチームはどう闘うか。世界選手権のメダル獲得は55、57、62kg級の中量級なので、軽量級で確実に白星をマークして試合の流れをつかみたいところだ。
【50kg級】櫻井はなの(育英大)- Livach, Oksana
2018年世界選手権3位のオクサナ・リバチは、東京オリンピック代表(5位)であり、今年の世界選手権の代表(9位)。2度のU17世界チャンピオンの櫻井が、シニアの国際舞台での飛躍の足がかりをつかめるか。
【53kg級】片岡梨乃(早大) - Malanchuk, Liliya
リリア・マランチュクは今年のUWWランキング大会、マテオ・ペリコネ国際大会(イタリア)で優勝。シニアとU23の世界選手権は上位入賞ならなかったが、その経験を生かせるか。片岡がどう挑むか。
【55kg級】清岡もえ(育英大) - Khomenets, Aleksandra
アレクサンドラ・ホメネツは、清岡がU23世界選手権の1回戦で負傷による途中棄権で勝った相手。シニアの世界選手権では2位に入った強豪。しっかり勝って実力を示したい。
【57kg級】屶網瑠夏(至学館大) - Hrushyna Akobiya, Alina
U20世界チャンピオンの屶網がシニアの世界トップ選手に挑む。アリナ・フルシナ・アコビヤは昨年、シニアとU23の欧州選手権を制し、今年のシニアの欧州選手権で優勝。シニアとU23の世界選手権はともに3位。シニアで優勝した櫻井つぐみとは2-2の同スコアでの黒星の選手だ。
【59kg級】德原姫花(自衛隊) - Tkach, Yulia
引退したと思われていた2014年の63kg級世界チャンピオン、33歳になるユリア・トカチがエントリー。2008・12・16年のオリンピックに出場し、世界選手権で4度メダルを取っている実力を発揮するか。徳原がU23世界チャンピオンの意地を見せるか。
【62kg級】坂野結衣(警視庁) - Prokopevniuk, Ilona
今年の世界選手権3位で、世界や欧州でコンスタントに上位入賞を果たしているイロナ・プロコペブニウクに、坂野がどう挑むか。
【65kg級】今井海優(自衛隊) - Sova – Rizhko, Tatyana
タチアナ・リジュコは昨年のU23欧州選手権優勝、今年はシニアの欧州選手権優勝。世界選手権7位だった。強豪だが、全日本選手権では68kg級に挑む今井は、勝って弾みをつけたいところ。
【68kg級】小林久美(福岡大) - Belinska, Alla
アラ・ベリンスカは東京オリンピック76kg級の代表選手。72kg級を経て、今年は68kg級で世界選手権に出場した。小林がオリンピアンを相手に、どう闘うか。
【68kg級】藤倉優花(育英大) - Alpyeva, Anastasia
アナスタシア・アルプイェワは昨年の欧州ジュニア(現U20)選手権とU23世界選手権を制し、今年、世界選手権出場を果たした(12位)。同じ成長途上の藤倉がどう挑むか。
【76kg級】山本和佳(至学館大) - Osniach Shustova, Anastasia
昨年の世界選手権5位のアナスタシア・オスニアチ・シュストワだが、今年は12位。抜け出ている選手ではない。世界への飛躍を目指す山本は超えなければならない相手だ。