※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=布施鋼治)
「待っていました、と言うべき大会ですね。そのせいか(キッズの)主要選手はほとんど出ています」
11月5~6日の2日間、三重・津市産業スポーツセンター(通称サオリーナ)で開催された「第8回吉田沙保里杯 津市少年少女選手権大会」。大会第1日、東京から20名の選手を引き連れ、三重県までやってきたWRESTLE-WINの永田克彦代表は興奮気味にまくし立てた。
新型コロナウイルスの影響で3年ぶりの開催となった大会は、北は北海道から南は沖縄まで、102チーム828選手の参加によって華々しく行なわれた(ちなみに一クラブでの最多参加選手数は兵庫の猪名川レスリングクラブの46名)。
大会名通り、主催は津市で、開会式ではこの大会の会長も務める津市の前葉泰幸市長もあいさつした。昨年新型コロナの感染拡大に伴い開催が中止となった三重国体のために用意されたスポーツ新興基金をスポーツ強化のために使うことが決定され、その一貫として、この吉田杯にも基金の一部が使われたという。
この大会の第1回から委員長を務める栄和人・至学館大監督は「ようやく開催することができ、よかった」と相好を崩した。「今ではキッズもたくさんの小さな大会が開かれるようになったけど、やっぱり吉田沙保里というネームバリューは大きい。協会が主催しているんじゃないかと見まがう規模でしょう。沙保里の冠のついた大会に出ることを楽しみにしているキッズ選手も多いと聞いています」
前回大会までは海外からの参加もあった。今年はコロナ禍ということもあり、海外勢の招聘は断念せざるをえなかったが、今大会では初めて団体戦が組まれた。吉田沙保里・名誉会長は「盛り上がっていましたね」と目を細めた。「キッズの団体戦は私も初めて観ました。たとえ負けたにせよ、チーム全体が盛り上がって、『また頑張ろう』と思ってもらえたらうれしい」
団体戦に出場した「至学館クラブ」は早々に敗退したが、大会本部席から観戦していた栄委員長は「至学館チームは30人以上いる。練習はずっと週2回でした。ちょっと練習回数を増やさないと勝てないと思い、先月(10月)から週4回に増やしました」と打ち明けた。
「昔は『至学館からオリンピックの金メダリストを育てる』という思いが強かったけど、いまは通っている子どもたちやその親御さんに『レスリングを習わせてよかった』と思ってもらいたい。レスリングを通じて親子がひとつになるクラブでいいと思っています」
ビッグイベントならではの演出も見逃せない。会場には三重県では知らない人はいないスーパーのマスコットキャラ「トラ吉くん」や、その息子である「トライくん」も登場し、出場する子どもたちにシールを配るなどして大会の盛り上げに一役買った。
会場ロビーには記念写真撮影のブースやレスリンググッズ販売所も設けられ、ちょっとしたレスリングフェスの様相を呈していた。
吉田沙保里・名誉会長は「これだけの大会になったのは、兄のおかげ」と、裏方として3年ぶりの開催に尽力した吉田栄利委員(三重・一志ジュニア教室代表)に感謝した。
「私は、子どもたちが頑張っている姿を見ているだけなんですけど、大会に協力してくれたたくさんの方々のおかげで開催することができました」
そう言いながらも、自身が指導する一志ジュニア教室の子どもたちの試合ではセコンドを買って出て、熱心にアドバイスを送っていた。「自分も3歳からレスリングをやってきた。見ていたら懐かしい気持ちになったし、熱いものが込み上げてきました。自分は(キッズの)親の世代になってきているので、失礼ながら自分の子どもを見るような目線で見ていました(微笑)」
来年も、予定通りに第9回大会が開催できることを祈りたい。