※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
2022年全日本大学グレコローマン選手権・82kg級は、全日本学生選手権3位の谷崎大造(山梨学院大)が優勝。昨年まで4年連続で王者を輩出していた同大学グレコローマンの“伝統”を継続した。
昨年までの4年間は、山田修太郎(現大相撲)や大津拓馬(現ALSOK)らフリースタイルを中心にやっていた選手が、その技術をグレコローマンに生かしての優勝だった。グレコローマンを中心にやっている選手の優勝となると、2015年の雨宮隆二(66kg級)以来となる。
谷崎にとっては、岐阜・岐南工高時代の2018年JOCジュニアオリンピック・カデット80kg級以来の優勝となる。「高校のときから、あまりタイトルには恵まれなかった。(前の優勝から)長かったですね。素直にうれしいです」と喜びを表し、「練習のときから、勝ちたい、という気持ちを持ってやっていた。それが実ったかな、と思います」と続けた。
決勝は第1ピリオド、パッシブからローリングを受けて0-3とリードされたが、第2ピリオド、逆にパッシブからローリング2回転で逆転。5-3のスコアでタイムアップ。グラウンドの攻撃力の差で優勝をものした。
先にローリングを決められたものの、焦りはなかったそうだ。練習の中心はグラウンドで、ローリングが決め技。「パッシブを取れば返せる」という強い気持があり、そのチャンスを待った。「焦らずに闘えたことが勝因だったと思います」と振り返る。決勝だけでなく、初戦からの全試合に「ローリングを決めることができました」と言う。
山梨学院大はフリースタイルの選手が中心なので、グレコローマンに特化した練習はそう多くできない。技術面では、グレコローマン専門の練習ができるチームの選手が上だと思っている。だが、両スタイルに共通する必要な要素が「体力」。これは、フリースタイル中心のチームの中の練習でも身につけることができる。
ローリングは、両スタイルでかけ方に微妙な違いがあって、まったく同じではないが、腕力や瞬発力が必要という根本の部分では共通している。フリースタイルの選手相手であっても強化はできる。「フィジカル面の強化をやってきたことがよかったと思います」と言う。
タイトルを取れなかったのは、大学1年生(2020年)の冬、ひざの前十字じん帯と半月板を負傷し、手術して1年半ほどマットから離れていたことも一因。その時期にできる練習として、連日やったのが体力の強化。「パワーでは負けないと思いました。腐らずに体力強化をやってきてよかったです」と言う。
「レスリングの基本は体力」を感じさせてくれる優勝は、徹底した体力トレーニングで世界一に昇りつめた成國大志(MTX GOLDKIDS)に相通じる姿勢と言えよう。
この優勝を弾みとした次の目標は何か。その問いに、具体的な成績ではなく、「この優勝におごらず、もっと地道に、毎日の練習を大切にしていきたい」と答え、フリースタイルの試合にも出場して上を目指す腹積もり。「グレコローマン専門の中で練習していなくとも、こうして勝つことができました。フリー、グレコと分けて考えるのではなく、レスラーとして、どちらも頑張っていきたい」と話した。