※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=布施鋼治)
全国少年少女選手権が2022年7月29~31日、6年ぶりに“聖地”である東京・代々木競技場第1体育館に戻ってきた。一昨年は開催地を札幌から東京に変更して開催しようとしたが、新型コロナウイルスの感染拡大を受け、結局、中止に。昨年は時期をずらし熊本で行なわれたが、小学5・6年生に限定された大会となった。
今回は2019年の和歌山大会以来、約3年ぶりに学年を本来の小学3年生以上の規模に戻して行なわれた。
試合前、何人かのクラブ関係者は「今回ばかりは結果がどうなるか分からない」と口を揃えた。それもそうだろう。コロナの影響で、どのクラブも練習時間は減っている。子どもとはいえ、やり切ったと思える練習ができていなければ、指導者に不安があっても不思議ではない。
千葉地区のキッズ・レスリング界で確固たる地位を築きつつある「パラエストラ・チームリバーサル」でも、今回は優勝者&準優勝者が各1名、3位が3名という結果に終わった。
同クラブの鶴屋浩代表は「コロナ前は週6回練習していたけど、現在は週3回。できる範囲内での練習での成果なので、満足はしています」と総括した。「当然、もっと練習したいと思っている子はいます。全員ではないですけどね」
3年生 39㎏級優勝の三谷洸心は、5人兄弟の次男。父親はレスリング経験者で、兄弟全員がマットに上がるレスリング一家だ。長男の栄心は今大会の6年生 39㎏級に出場して3位だった。
「いま中学生になっている姉は、以前、この大会で優勝しています。下の兄弟はまだ小学校3年生になっていないので、出られない。栄心も決勝まで行きたかったはずだけど、全国大会はレベルが高いので、指導者の立場としては満足しています。父親は、弟が優勝したので喜んでいるかもしれないけど、栄心はこれからですよ」(鶴屋代表)
6年生39㎏級で2位になった神河勇吹も、父はレスリング経験者だという。
「彼は幼稚園の頃からやっていて、真面目なタイプ。ひとつ前に出た大会で優勝候補を破ったので、今回もいけるかなと思ったけど…。決勝まで進出してよかったと思います」
結果うんぬんより、今回はまず本来の形に近い全国大会が復活したことに喜びを感じている。「この大会にはもう十何年か関わっているけど、久々に代々木でやるということで、『やっと、いつも通りにレスリングができるようになってきたんだな』と思いました」
鶴屋代表は「コロナがもう少し収まってくれば、キッズも以前と同じように週6回の練習に戻したい」と切に望む。「以前は週2回、日体大柏高校での練習も入っていた。しかしながら、もう2年半はやれていない。そういう練習を戻していけば、みんなさらに強くなっていくと思う」
コロナ禍から抜け切ったわけではないが、感染防止対策を講じながら開催する大会が増えてきた。キッズを対象とした大会も無関係ではなく、増加傾向にある。
「コロナの影響もあって、ウチのジムではキッズ・レスリングをやる子の人数はちょこっとだけ減りました。将来有望な選手だったけど、親御さんがコンタクト・スポーツであることを気にして、やめさせるケースもあった。コロナが明けたら、戻ってきてほしいですね」
大会が進むにつれ、負けて悔し泣きする子も数え切れないほどいた。いつもの全国大会の風景ながら、その涙の先にはレスリングの練習がマスクなしで行なえる日常が戻っていると信じたい。