※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
バーレーン・マナマで行われたU20アジア選手権に出場した男子フリースタイル・チームが7月12日、成田空港に帰国した。「銀2・銅2」を取り、国別対抗得点は4位だった。
3スタイルを通じた馬渕賢司チームリーダー(中京学院大監督)は、U15から続く長丁場となった遠征の実現に尽力してくれた協会事務局ほかの関係者への謝意を述べるとともに、出発前に2日間だったが合宿を実施できたことでチームのまとまりができ、いいムードが作れたことに感謝の言葉を続けた。空港で初顔合わせするのではなく、できれば移動の前に集まって汗を流す制度の継続を望んだ。
3スタイル全体を通じ、コロナのため2年間、海外に出ていなかったことの影響を感じたそうだ。「U15に出ていた選手が、U17を飛び越えてU20に出ています。選手だけでなく、コーチも情報を持っておらず、浦島太郎みたいな感覚で臨みました」と、久しぶりの国際大会に戸惑いがあったことを口にした。
どの国も同じ条件とも思えるが、昨年のジュニア(現U20)やカデット(現U17)の世界選手権には、イラン、インド、カザフスタンなどの強国は参加していた。それだけに、今年は出場できたことは大きく、「今後のためにもよかった」と話し、今月末のU17世界選手権(イタリア)と来月中旬のU20世界選手権(ブルガリア)で「イランやインドが世界でどこまでやれるかを見極めたい」と、世界の情勢の把握を目指す。
フリースタイルは金メダルなしだったが、「今回は国際大会が初めてという選手が多く、経験を積む遠征。内容は悪くなかった。重量級の選手も攻めており、最後まで試合を捨てることなく闘っていた」と評価。グレコローマンは、構えや体力、技術力は上位選手に比べて劣っており、若い世代からの本格的強化の必要性を痛感したと言う。
女子は、インドが飛躍的な成長を遂げる中、国別対抗得点で優勝し「よくやってくれた」と振り返る。ただ、インドの躍進は目を見張るものがあり、「数年後にはシニアに及ぶ。よりいっそうの強化が必要」と警戒感を口にした。
バーレーンは日中の気温が40度。「外に出るだけで息苦しい」そうで、朝起きて、散歩して体も起こす、といったことが不可能という状況。室内だけでしか活動できないのは選手にとっても辛く、建物の中は冷房が効きすぎるケースもあって、コンディション作りは苦労したという。しかし、「それも経験」と話す。
さらに、マスクをしている人がほとんどおらず、役員がパーティーに出席したときは「(失礼だから)マスクを外せ」と言われたそうで、「文化習慣の違いを実感しました」と振り返った。
U15から通しで参加した前田翔吾コーチ(日本オリンピック委員会/クリナップ)は「数年前から感じていたが、イランやインドの体力はすごいと感じた。6分間、常に攻め続ける体力を持っている」という感想。
飛躍しているインド選手に体力で日本選手がまさることは「厳しいかもしれない」。シニアにおいて日本選手がインドにまさっているのは、組み手や技の完成度の高さによるものであり、「技術で勝つことが、インドに対抗する道と感じた」と言う。ただ「体力が足りなければ技も通じない」とし、体力をつけつつ、日本選手の長所である技を磨いていく必要性を強調した。
インド躍進の原動力は、65kg級で乙黒拓斗(自衛隊)のライバルの一人でもあるバジラン・プニア(2018年アジア大会優勝)にあると見ている。ジョージアのコーチの指導を受けており、57kg級のラビ・クマールが受け継いで東京オリンピックで3位に入賞。その闘い方がインド・フリースタイルの主流になっているという。
「以前は体の柔らかさと粘りで勝っていたのが、今はガンガン前に出てプレッシャーをかけ、崩しを使って闘っている。U20でもU15でも、そういうレスリングでした」。若い世代でそのスタイルが確立し、そのまま経験を積んでシニア世代になれば、「さらなる脅威になる」と分析した。
▼65kg級2位・細川周(京都・丹後緑風高)
▼70kg級3位・鈴木大樹(山梨学院大)
▼74kg級3位・硎屋亮太郎(日大)
▼79kg級2位・高原崇陽(専大)