※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=東京スポーツ新聞社・中村亜希子)
2022年明治杯全日本選抜選手権の女子65kg級決勝は、森川美和(ALSOK)が今井海優(自衛隊)を8―1で下し、2連覇を達成。世界選手権(9月、セルビア)の代表にも決まった。
快勝にも森川は反省の弁だ。「研究されていたとしても、圧倒して勝つようにコーチに言われていたので悔しい。全試合テクニカルフォールで勝ちたかったし、最後の試合は1点取られた。もっとポイントを取れる場面もあったのに、逃してしまった」と、どこまでも自分に厳しかった。
レベルの高い環境に身を置くことで、妥協を許さない姿勢を身に着けている。日体大を卒業し、4月からALSOKに入社した。指導を受ける伊調馨や、高谷惣亮が所属するレスリング界の強豪チーム。「偉大な先輩が多くて、自分なんかがいいのかなと思う。でも、自分が頑張って、世界の人に会社を知ってもらえるように頑張りたい」と、プレッシャーを力に変えるつもりで練習に励んでいる。
トレーニング環境も恵まれている。週の半分を日体大の女子チーム、半分を男子チームで練習している。女子との練習では、伊調から組み手など最高の技術を学習。男子では重量級で長年日本トップに君臨し、世界と戦った松本慎吾監督を筆頭に、強豪部員らにスパーリング相手をしてもらっているという。
松本監督は、今も現役男子が力負けするパワーを誇る。「(同監督の)足を上げられるようになることを目指しています」と森川は話す。「男子選手にはボコボコに攻められることもあるけど、ポイントを取れた時に『この人から取れたんだ』と自信になる。いい環境を作ってもらって感謝しています」と充実の日々だ。
レスリング以外のスター選手への憧れもモチベーションになっている。携帯電話の待ち受け画面はバドミントンの桃田賢斗(NTT東日本)との2ショット写真。「桃田さんに認知されるように頑張りたい」。自分の名前を日本、いや世界に知らしめる最高のチャンスは2024年パリ・オリンピックだ。
出場を目指し、選考レースが始まる年末の全日本選手権からオリンピック階級の68kg級に上げる予定。東京オリンピック代表の土性沙羅(東新住建)が復帰してくる可能性があるが、「土性選手はすごい選手。重量級を引っ張る憧れの選手。全日本選手権に出てきたら、しっかり勝ちたい」と勝負を挑むつもりだ。
その前に是が非でも手に入れたいのが“世界女王”の称号。「昨年の世界選手権は銀メダルだったので、今年はしっかり金メダルを取って、12月にぶつけたい」
伸び盛りの22歳に注目だ。