※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
日本女性として初めて米国大学レスリング界で活躍し、コーチも務めた米岡優利恵さんがノルウェーの女子ナショナルチームのヘッドコーチに就任した。日本女性で外国ナショナルチームのコーチになるのは、米国のコーチを務めた山本聖子さん以来、2人目。
米岡さんは千葉・柏クラブでレスリングを始め、埼玉・埼玉栄高校では主将を務めた。英語をしっかり勉強し、米国の大学に合格してレスリングを再開。2019年全米大学選手権116ポンド(52.6kg)級では6位に入賞した(関連記事=最終学年の2020年は新型コロナウィルスで大会が中止)。
2021年1月からプロビデンス大でコーチを務めていた(関連記事)。米国大学への橋渡し、大学のコーチ就任、ノルウェー行きとも米国在住の八田忠朗氏(全米男女チームのコーチを歴任=日本協会・八田一朗元会長の次男)の尽力があって実現した。
ノルウェー協会との契約は、ひとまず2024年パリ・オリンピックまでだが、「2028年ロサンゼルス大会までを目標にやってほしい。メダルを取る選手を育ててほしい」と依頼されており、強化対策チームと組んで長期的視野に立った指導をするという。
現地の選手には、採用試験と面接でノルウェーに渡ったときに接している。「アメリカン・スタイルと日本のスタイルがうまくミックスしたスタイル」というのが同国レスリングの感想。吸収力が早く、真面目で身体能力が高い選手が多いという。投げやテークダウンからのスクランブル場面では、「おっ!」と思う柔軟で予想外な攻撃をするヨーロピアン・スタイルのレスリングも感じたそうだ。
若い選手が多く、「とても将来性がある若いチーム」とのこと。日本のスタイルを取り入れるため、日本に合同練習を申し入れる予定があるほか、八田氏とのつながりで米国ナショナルチームとの交流にも意欲を持つ。米国ではメンタル・コーチングを学んでおり、心理面が勝敗を左右することを実感している。フィジカル面だけでなく、心理面の強化にも取り組む腹積もりだ。
欧州は多くの国が陸続きということもあり、年間でかなりの国外遠征をしながら練習を積むのが一般的。遠征で選手とともに過ごす時間が多くなるので、「しっかりコミュニケーションをとり信頼関係を築くところから頑張りたい」と言う。
「個人個人のスタイルを生かしながら、彼女達のレスリングを完全に『change』(変える)するのではなく、いい所に『add』(加える)することを大切にしていきたい。6年はあっという間に過ぎていきます。少しでも迷いの気持ちがあれば、どんどんゴールは遠ざかっていってしまいます」と続けた。
ノルウェーはスウェーデンとともに女子レスリング発祥の地で、1980年代から90年代にかけて、のべ11人の世界チャンピオンが誕生。坂本涼子さん(現兵庫・芦屋学園中高監督)の好敵手だったグドルン・ホイエは4度、世界女王に輝いている。
その後は低迷し、オリンピック出場は2016年に69kg級でシグネ・ストレが出場したのみ。しかし、2018年にはグレース・ブレンがU23世界選手権57kg級で優勝するなど、再浮上の兆しも見せている。