2022.04.13

【2022年ジュニアクイーンズカップ・特集】躍進クラブからチャンピオンが誕生! 遠隔地への遠征で実力アップ…U15-58kg級・野口紗英(帯広クラブ)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

 

躍進クラブを象徴するようにMVPを受賞した野口紗英(帯広クラブ)

 2022年ジュニアクイーンズカップのU15-58kg級で、北海道から出場した帯広クラブの野口紗英が、4試合中3試合を無失点のテクニカルフォールという内容で優勝し、最優秀選手賞に輝いた。「クイーンズカップは初めての優勝。とてもうれしいです」と顔をほころばせた。

 試合では「思ったレスリングができました」と言う。決勝の吉川華奈(JOCエリートアカデミー)戦のみフルタイム(4分間)の試合。最後はやや消極的になってコーションを取られたりもし、「(準決勝までの3試合で)ちょっと疲れていましたね」と苦笑い。それでも、終了間際にポイントを取り返して意地を見せ、「自分のレスリングがまあまあできました」と言う。

 帯広クラブは、男子グレコローマン63kg級全日本王者の清水賢亮(現自衛隊)の出身クラブ。昨年の全国少年少女選手権(5・6年のみ実施)で2階級を制し、全国中学選抜選手権では男女各1選手(伊藤海里、荒川笑舞)が優勝と、先輩に続くべく強豪選手が次々と生まれている。

試合以上に(?)緊張した表彰台!

 野口も2017・18年全国少年少女選手権や2018・19年全国少年少女選抜選手権で優勝するなど台頭していた。中学に進んでからは、コロナで大会が少なかったこともあるが初めての優勝。表彰式の前に最優秀選手賞に選ばれたことを伝えられ、表彰式では「とても緊張してしまいました」と、試合以上の緊張の気持ちで一番高いところに上がった。それでも「とてもいい気持ちでした」と振り返る。

決勝でJOCエリートアカデミーの選手と相対した野口

 5歳からレスリングを始めた。父の職場の同僚がキッズ・レスリングをやっていて、誘われるように参加し、「楽しかったので続けました」と言う。帯広クラブは、帯広北高~自衛隊でレスリングをやっていた五十嵐真人氏が、自営するカイロプラテックの2階で運営するクラブ。清水を筆頭に帯広北高に進んだ選手の何人かが全国大会で好成績を残しており、かつてのレスリング王国・北海道の復活の期待を背負うクラブだ。

 だが、まだ中学生の野口にとって、清水は雲の上の存在なのだろう。今のモチベーションは「中学の最後の年なので(今年は)結果を出したい」という思い。昨年は、この大会の中学生の部、全国中学生選手権、全日本女子オープン選手権は中止、全国中学選抜選手権は初戦敗退という結果だっただけに、今年にかける思いは強い。

7月には初の国際大会、U15アジア選手権へ挑戦

 技術向上を手助けしてくれるのが、遠距離への遠征。佐賀・鳥栖クラブへ出向いての練習で、見たこともない技を目にし、その技に挑んで反復した。「技の(種類や精度が)変わってきたと感じます。以前のままでいっていたら、優勝はできなかったと思います」と言う。

決勝の終盤、追い上げられたが、最後は意地でポイントを奪った

 また、三重で行われている吉田沙保里杯にも出場し、全国のレベルを肌で感じて実力向上に役立てている。北海道からの遠征では両親に経済的な負担をかけることになり、「感謝しています」としみじみ話した。

 すでに帯広北高に進むことを決めており、地元で鍛えて北海道初の女子の全日本チャンピオンを目指す。今年7月には、初の国際大会としてU15アジア選手権(7月、バーレーン)に日本代表として出場することになりそう。「海外の選手は、ほとんどやったことがありません(吉田沙保里杯でモンゴル選手とやったことがあるだけ)。どんなことをやってくるかな、という心配はあります」と不安も感じているが、今の勢いなら、それを上回ることが予想される。

 憧れの選手は須﨑優衣選手(現キッツ)。「オリンピック金メダリストが目標ということは、自分も(そこを目指す)?」との問いに、力強く「はい!」と答えた。