※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治、撮影=保高幸子)
2022年風間杯全国高校選抜大会・第2日、学校対抗戦の決勝では日体大柏(千葉)がいなべ総合学園(三重)を5-2で撃破。2年ぶり5度目の優勝を果たした。
今大会でチームを率いた森下史崇監督は「2日目になってからは準々決勝、準決勝、決勝といずれも気を抜けなかった」と振り返る。「飛龍との準々決勝からは、一歩間違えば勝敗が逆転するような試合が続いていましたからね」
いなべ総合学園との決勝では、初戦となる51㎏級の里中飛雅から勢いをつけたかったが、伊藤久遠をいいところまでは攻め込むものの点数に結びつかない攻防を続け、最後は2-9で敗れてしまった。いきなりつまずいた格好だが、続く55㎏級でキャプテンの松村祥太郎が踏ん張った。髙田勇とデットヒートを繰り広げた末に2-1で辛勝し、チームスコアは1-1のイーブンへ。
「松村が(初戦を落した空気を)切り換え、いい流れを作ってくれた」(森下監督)
60㎏級の木村太智は試合開始早々、勢いのあるローリングを繰り返し、中西真大から10-0でテクニカルフォール勝ちを決めた。
「55㎏級の松村、65㎏級の山下、125㎏級のバトバヤルと、ウチのチームには強い選手が3人いる。学校対抗戦では、残り1勝をみんなで勝ち取ろうと考えていました」(森下監督)
木村の秒殺勝利で柏は完全に勢いづく。65㎏級では山下凌弥が屶網剣勝を相手に着実に点数を重ね5-3で快勝し、3勝目を挙げた。125kg級が不戦勝なので、この時点で優勝が決まった。
スコアのうえでは優勝(4勝目)に王手をかける状況で、71㎏級の伊藤拳将はディフェンシブな闘いが目立つ辻本航基から着実にポイントを奪い、2-1で勝利。優勝を文句なしに決めた。森下監督は伊藤の成長に目を細めた。「丹後緑風との準決勝では、最後の最後まで諦めず、本橋知大選手に14-11と逆転勝ちしてくれました。地力はついてきたかなと」
日体大柏は昨年の大会、秋田商(秋田)との準々決勝で2-5で敗れ、5年連続優勝を逸した。森下監督は「昨年の選抜を取れなかったけれど、残った選手たちがなんとか自分たちで取り返してやろうという思いで臨みました」と振り返る。「先輩たちの思いを引き継いでやってきたということは大きな励みになったと思う」
新型コロナウイルスの影響で遠征や出げいこができない状況下では、調整にも工夫が必要だった。森下監督は「僕はまだ若いので、部員たちに胸を貸していました」と打ち明ける。
「92㎏級の選手までとはスパーリングをやっていました(注=森下監督は現役時代、55・57kg級の選手)。今まで大学選手や学外の選手たちがやってくれたことの代わりになれるよう、できる限りやってきました。選手たちも、何とか自分を倒してやろうという気持ちで向かってきた。それもよかったと思います」
次の団体戦は8月のインターハイ(高知)。昨年の同大会では決勝で敗れているだけに、森下監督は手綱を絞め直す。「夏までにいっそうレベルアップして、より強くなった姿を見せたい」
自らの体を張った森下監督の指導によって、名門は完全復活するのか。