※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫)
残り5秒を切ったところでの大逆転劇-。2021年インターハイの女子個人対抗戦62㎏級決勝は、佐々木すず(東京・安部学院)がビャンバスレン・フラウン(愛知・至学館)を相手に終了間際に2点を上げ、6-5でうれしい初優勝を飾った。
喜びの第一声を聞くと、佐々木は「レスリングをやめないで、よかったと思いました」と意外な事実を打ち明けた。「去年は(コロナで)大会もなかったし、自分が不甲斐なくて、気持ちが腐っていて、何度もやめようと思いました」
北海道帯広市で小学1年生からレスリングを始め、高校進学を機に上京して安部学院に進学した。「いつ誰の試合だったかまでは覚えていないんですけど、クイーズカップに出ていた安部学の選手の試合がすごくカッコいいと思ったので、この高校でレスリングをやることを決めました」
今大会で優勝できた要因は? 「練習してきたことは半分も出せなかったと思う。でも先輩やOG、同期に練習でボコられているうちに『負けたくない』という気持ちが少しずつ芽生えてきた。それが試合でも出たんだと思います」
セコンドに就いた斎藤ほのかコーチは「佐々木は不器用な子。うまいところがあるわけではないので、本当に気持ちの面が大きかった。最後まで諦めないでやればいけると信じていました」と目を細めた。
東京オリンピックは、ボランティア・スタッフとして会場へ。佐々木は高校のOGである向田真優(現ジェイテクト)や須﨑優衣(現早大)が金メダルを獲得するプロセスを現場で目撃した。これ以上の刺激はなかった。
「本当にカッコいいとか、すごいとか、月並みな言葉しか出てこないんですけど、先輩たちをお手本にして自分も頑張らないといけないと思いました」
どうすればオリンピックに手が届きそう? 「今の十倍くらい頑張らないと無理だと思いました。やるだけやります」
屈託ない笑顔とまっすぐな性格が印象的な高校2年生。次は10月の全日本女子オープンに出場する予定だ。