※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=布施鋼治)
今年2月、東日本学生連盟で初めて女子の学生委員長となった宮内美里さん(東洋大)が6月23日から3日間に渡って開催された2021年東日本学生春季選手権で、初めて大会運営に臨んだ。「正式には今回が初めてですが、実は去年の秋の新人選手権も、(去年の)委員長が大会に来られない状況だったので、代理という形でやっていました」
大学1年生のときから大会運営に携わっていただけに、進行に不安を感じることはなかった。「ただ、しっかりとした肩書をいただいたことで、多少のプレッシャーは感じていました」
宮内さんは裏方に徹しながら、リーダーシップを発揮しなければならないという難しい立場にいた。しかしながら、埼玉栄高校に在籍中は同校のレスリング部史上初めて女子でキャプテンを務めていた。そのキャリアも十分活かされたと感じている。
「私は、元々は選手でしたけど、(ひざの負傷が原因で)高校3年生のときには一回も試合に出られないキャプテンでした。結局、ひざを3回手術して、大学では選手としてはダメだった。途中からマネージャーとしてみんなをサポートする側に回ったけど、今では『自分にはこっちの方が向いているのではないか』と思うようになりました」
宮内さんが自分の感じているスキル、それは「人を見る力」だ。
「その力はほかの学生より長けていると思っています。だから、人によって言い方を変えたりしている。一緒に働きながら感じて、うまく人とつき合いながら人を動かしていく。それが大事と思っています」
昨年はほとんど試合がなかっただけに、今回の大会で審判などマットサイドを仕切った学生の半数以上が未経験者。時計を止めなければならない場面で止まっていないなど運営がスムーズに進行しない場面もあった。
宮内さんは「審判や試合運営のスキル向上は今後の課題として考えていかないといけない」ととらえている。「各大学で知識のある人を中心に、レフェリングやマットサイドの運営の仕方などを共有していき、それを代々つないでいきたい」
大会初日には試合中のけがにより、救急車で病院に搬送される選手もいた。幸い大事には至らなかったが、宮内さんは「私が、けがをして選手を断念したということもあって、見ていられなかった」と振り返る。
「マットのずれや汗による滑り…。そういうことは、必要のないけがの元。運営で未然に防げるけがは防いでいきたい」
次に携わる大会は8月25~28日の全日本学生選手権(東京・青山学院大記念館)。宮内さんは「今大会より長丁場になるし、参加人数も多くなる」と気を引き締める。
「同じ過ちを繰り返していたら意味はない。今回の反省を次につなげたい」