※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫)
優勝したというのに、曽我部京太郎(日体大)に笑顔はなかった。「いま取り組んでいる差しの取り方など、レスリングの組み立てがまだ全然できていない。課題が多く見つかった大会だったと思いました」
東日本学生選手権第1日の新人戦グレコローマン67㎏級。曽我部は初戦からビッグポイントは狙わない手堅い試合運びで勝ち進んだ。いったい、なぜなのか。
それは10月の全日本大学グレコローマン選手権で、国体少年3連覇を達成した選手として1年生王者になると期待されながら、準々決勝でフリースタイルを中心に闘っている安楽龍馬(早大)に0-7で敗れたことと無関係ではあるまい。
「自分は(不用意に)手を出してしまうくせがある。前回は小さなミスが負けにつながったと分析しています」
それから約1ヶ月半のインターバルで臨んだ今大会。決勝で丸山蒼生(日体大)を10-1のテクニカルフォールで下して優勝したことで、大学グレコローマン選手権での課題はある程度クリアできたと思いきや、曽我部の自己採点はとことん低い。
「体力面も技術面もまだまだだった。50点もつけられないんじゃないですかね」
悩みながらも、曽我部は前を向く。12月には全日本選手権に出場するが、狙うのはもちろん優勝だ。「今年はコロナの影響で思い通りにできないことがたくさんあった。そうした中で、どのようにレスリングに取り組めばいいのかということを考えました。何もできない期間は、逆に考える時間がいっぱいあった。自分の試合を見て、どこが駄目なのかを考えるようにしました」
曽我部は、まさに今、壁にぶち当たっていることを否定しない。「以前は前に圧をかけるレスリングが自分の持ち味だった。最近ではそういう闘い方が思うようにできていない」
3年連続出場となる全日本選手権では、本人が納得のいくレスリングをすることができるか。