※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治、撮影=保高幸子)
東京オリンピックの女子代表ら8選手が7月2日、東京・味の素トレーニングセンターで合宿を開始。3月17~22日の同所での合宿以来、約3ヶ月半ぶりの再開で、オンラインで練習やインタビューを公開した。
この日、東京都の新たな感染者数が100人を超えるなど、コロナ禍はまだまだ収束の気配を見せていない。それだけに選手や指導者は抗体検査を義務づけられ(全員陰性)、検温やレスリングシューズの消毒などコロナ対策を徹底したうえでマットに上がった。
各選手とも、まだそれぞれの練習場所で実戦練習を再開できていない状況だけに、合宿初日はストレッチ、体幹トレ、打ち込みなどスパーリングなしのメニューで汗を流した。「急に(激しい)練習をやってアキレス腱を切ったというケースもある。なので、今回は少し抑えながらやっていきたい」(笹山秀雄・女子強化委員長)
62㎏級の妹・友香子(ジャパンビバレッジ)とともに合宿に参加した川井梨紗子(同)は1ヶ月ほど前に人生初のギックリ腰になったことを明かした。「最近になって練習を再開したら、またやってしまった。いまは8割くらい戻っているけど、再発しないように注意しています」
この日、顔は見せたものの、マット練習には加わらなかった76㎏級の皆川博恵(クリナップ)は、1週間前、右ひざの半月版を除去する手術をしたことを明かした。「今年3月に一番悪くなったが、オリンピックは8月だし、手術するわけにはいかないと思っていました。でも、延期が決まったので手術に踏み切りました」。全治1カ月で、2カ月後には通常の練習に復帰できる見込みだという。
「コロナは決してマイナスなことばかりではない。手術をしたことで、皆川は1年後により万全なコンディションでオリンピックに出場できる」(西口茂樹強化本部長)
川井姉とともにオリンピック連覇を目指す土性沙羅(東新住建)は、懸念されていた肩の調子は戻ったものの、ひざがまだ万全ではないことを打ち明けた。「まだ痛みは少しあるので、完全にそれが取れるのを待ちたい。早くタックルの練習がしたいですね」
どんなコンディションであれ、参加した代表の気持ちはいずれも前向きだった。
「体力は落ちたが、レスリングの感覚は変わっていない」(川井姉)
「金メダルの目標はブレていない。焦らずゆっくり練習していけたらいいと思っています」(土性)
この合宿は今月8日まで行われるが、コロナ対策はレスリング場だけにとどまらない。「(期間中の)外出はコンビニ程度にとどめてもらいたい」(笹山委員長)
自由が制約された中でのスタートとなったが、選手・指導陣とも久しぶりの再会だっただけに、笑顔は耐えなかった。強化の源であるスパーリングは、次回の強化合宿から再開される。