※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
レスリング王国ロシアの中でも、多くの強豪選手を輩出しているダゲスタン共和国出身の新旧オリンピック・チャンピオンが、相次いで新型コロナウィルスに感染。けた外れの体力を持っている人間でもウィルスの侵入を阻止できない事実を、世界のレスリング界に知らしめる出来事が起こった。
つい最近、自身のインスタグラムで感染を発信したのは、2016年リオデジャネイロ・オリンピック男子フリースタイル86kg級王者のアブデュラシド・サデュラエフ(ロシア)。昨年は97kg級で世界V2を果たした。
感染の広がりの初期の頃には、感染者を助けるボランティア活動をしていることを発信していたが、自身が感染してしまった。現在は回復しているとのことで、サデュラエフは「私は新型コロナウィルスを甘く見ていました。病気を過小評価しており、感染して初めて脅威を感じました」などとコメントしている。
同じダゲスタン出身で、国籍をアゼルバイジャンに変えて2012年ロンドン・オリンピック男子フリースタイル84kg級を制したシャリフ・シャリホフも感染した。アゼルバイジャンのメディアが報じた。
昨年の世界選手権は97kg級に出場し、決勝でサデュラエフに敗れて銀メダルのシャリホフは「妻、母、父および姉妹、私の家族全員が感染しました。単なるインフルエンザ・ウイルスではありません。非常に危険なウイルスです」とコメント。現在は回復したそうだが、母は入院しているという。奇しくも、昨年の97kg級世界1、2位が感染した。
3月には、カナダに遠征してパンアメリカン選手権に出場した男子グレコローマン67kg級世界王者のイスマイル・ボレロ・モリーナ(キューバ=2016年リオデジャネイロ・オリンピック59kg級優勝)が、帰国後に感染が発覚している。
いずれも、強い体力のおかげか無事回復し、モリーナはトレーニングを再開しているようだが、家族や周囲は強い肉体の持ち主ばかりではない。感染の終息と東京オリンピック開催のため、全世界が感染阻止へ向けて努力しなければなるまい。
ロシアからの報道によると、ロシアでの感染者は36万人を超え、米国、ブラジルに次いで世界で3番目の多さだが、「少なく報じられている」というニュースも流れている。