2019.10.25

ドーピング潔白だった阪部創選手(自衛隊)が製薬会社を提訴

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

阪部創(自衛隊)

 男子グレコローマン77kg級の阪部創選手(自衛隊)と代理人弁護士は10月24日、都内で会見し、服用したジェネリック医薬品に本来含まれていない禁止物質が混入し、ドーピング検査で陽性反応が出て暫定的に資格停止処分を科されたことに対し、精神的被害を受けたとして製薬会社に慰謝料などの損害賠償を求めて東京地裁に提訴したことを明らかにした。

 同選手は2018年6月の全日本選抜選手権のドーピング検査で、利尿効果のある禁止薬物であるアセタゾラミドが検出され、8月16日に暫定的に資格停止処分を受けた。その後、服用していたサプリメントや薬の分析を求めた結果、減量後の食事で胃腸に負担がかからないよう、医師が処方して服用した胃腸薬にアセタゾラミドが混入されていることが分かった。

 薬の添付文書に成分が不記載であったため、日本アンチドーピング機構(JADA)から「過誤も過失もないものと認められる」と判断され、今年2月22日に処分が取り消された。この間、試合出場のほか、自衛隊の練習に加わることもできなかった。

 阪部選手は「身に覚えがなく、当初は何も考えられなかった。東京オリンピックの選考レースにぎりぎり間に合ったが、(判明が)遅かったらオリンピックに挑戦すらできなかった。使用可能の薬から禁止物資が出てしまっては、自分を守れない。重大なことと認識してほしい」と話した。

 代理人弁護士は「過失のないアスリートが半年もの間、資格停止処分、および成績失効処分を受けたという異例の事案」とし、「製薬会社が一切責任を負わないのは不均衡。責任の所在を明確にしたうえで、製薬会社、国、JADA、競技団体、アスリート等が協力して過失なきドーピングを防止する必要があるものと考える」とコメントした。

 阪部選手は、今年6月の全日本選抜選手権に復帰参戦して初戦敗退だったが、7月の全日本社会人選手権で優勝。9~10月の茨城国体は87kg級を制した。全日本選手権は本来の77kg級に出場する見込み。