※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
【ヌルスルタン(カザフスタン)、世界選手権取材チーム】3大会連続で第1次予選(前年の世界選手権)での出場枠獲得ならなかった女子の最重量級で、昨年まで2年連続世界3位だった皆川博恵(クリナップ)が銀メダルを獲得。オリンピック出場枠獲得のみならず、代表内定も勝ち取った。「1位と2位じゃ全然違うんですけど」と前置きしたうえで、「自分の成長が見られた試合だった。全体通してよかったと思います」と話し、ホッとした表情を見せた。
2017年世界選手権の銅メダルは、前年のリオデジャネイロ・オリンピックのメダリストが一人も出場してない中での成績。昨年は3位決定戦の相手選手が負傷棄権し、最後を闘うことなくして手にした銅メダル。記録として後々まで残ることに間違いはないが、心の中で感じる満足度という点では、やや低いものがあったに違いないし、周囲も同じような見方をしてしまう。
この間に行われたアジア選手権やアジア大会では、いずれも中国の選手に敗れて優勝を逃している。日本の第一人者ではあるが、“皆川はやってくれるのだろうか”という不安があったのは確かだ。
だが、今大会の3回戦で“天敵”のジョウ・チエン(周倩=中国)を撃破してオリンピック出場枠を獲得。勢いに乗って準決勝で欧州大会3位のエップ・マエ(エストニア)を破ってオリンピック代表を手中に引き寄せた。「怖がらずに、相手にくっつく練習をしてきました。そういうのは、結構試合に出せました。成長した部分だなって思います」-。
世界の中では身長が低い方となる皆川にとって、離れた状態からタックルを決めるのは厳しいものがある。組みついてのタックルに活路を見出したいが、組みつけば投げがくる可能性も大きくなる。それを恐れずに組みつき、タックルを仕掛ける練習の成果が出た大会だった。
決勝では練習通りにいかないことにも直面した。脚をとって確実にテークダウンを奪うことだ。どうしても押し出そうとしてしまう。「こうした細かい技術も向上させたい。体力的な部分もまだまだ向上できると思ってるので、全体的に底上げしていきたいと思います」との課題が残った。
金メダルには手が届かなかったが、世界V2(通算5度目)のアデライン・グレイ(米国)が頭ひとつ抜けている状況下で、「追いつけない差ではないと思う」との手ごたえも感じている。「今までやってきたことが間違ってなかったと思う。今までやってきたことにプラスして、もっときつい練習をして、東京オリンピックを迎えたいと思います」。
オリンピック2大会連続でメダルから遠ざかった女子の最重量級。皆川が金色のメダル獲得で新たな伝統を築き上げるか。