※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
【ヌルスルタン(カザフスタン)、世界選手権取材チーム】女子の先陣を切ってオリンピック代表に内定した53kg級の向田真優(至学館大)。その勢いで、この階級での初の世界一、そして4月のアジア選手権決勝で負けたパク・ヨンミ(北朝鮮)へのリベンジを目指したが、腕を決められての“ローリング地獄”にはまってしまい、テクニカルフォールで黒星。出場は決まったが、東京オリンピックでの金メダル獲得に向けて不安が大きくなった。
オリンピック出場枠がかかっていたせいか、準決勝までも特段に攻撃レスリングというわけではなく、慎重な闘いが続いていた。決勝は、その“足かせ”が外れて攻めるレスリングが期待されたが、パクの防御は強く、なかなか攻撃できない。辛うじて相手のアクティブタイムによる1点を取っただけの静かな第1ピリオド。
試合が動いたのは第2ピリオド。テークダウンを奪われるや、左腕を決められての連続ローリング。あっという間に10点差となり、リベンジはならなかった。「強かった。本当にディフェンスも強くて、自分の攻めよりも相手のディフェンスや攻撃が上回っていた」。接戦の末、終了間際に逆転負けだったアジア選手権よりも、「力をつけていた。実際にやってみて感じました」と言う。
惜敗だった相手に完敗-。それでも、「出てしまった結果は変えられない。この結果をしっかり受け止めて頑張っていきたいと思います。これが東京オリンピックの本番じゃなくて、よかったなって思います」と気を取り直して話した向田。この日のうちに前向きになるのは「多分無理」とのことだが、「明日からは前向きになれるように頑張ります、この悔しさを東京の舞台で晴らせるように頑張ります」と、努めて明るく話した。
来年3月に大学卒業を迎え、進路は未定ながらレスリングに専念できる環境となることは間違いない。「1年弱あるので、しっかり準備もできる。今よりももっともっと改善できるところがたくさんあると思います」と言う。具体的には、「グラウンドのディフェンス部分をしっかり練習をし、タックルを決めて自分のペースに持っていけるレスリングを強くしていきたい」と続けた。
男子グレコローマンでは、3月に世界王者のステパン・マリャニャン(ロシア)のローリング地獄に完敗した太田忍(ALSOK)が、この大会で快勝して世界一を手に入れた。勝負の世界は、過去の対戦成績や試合内容が、そのまま当てはまるものではない。あと1年。金メダルは決して届かない距離ではない。