※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治)
「実は7月12日に石川県で行なった練習試合で左のハムストリングスの肉離れを起こしました。ちょっと前までは世界選手権出場も危ないんじゃないかと思っていました」
8月下旬、男子フリースタイルの公開練習。125㎏級の荒木田進謙(athletic camp LION)はショッキングな事実を明かした。「でも、毎日リハビリと(左足に負担のかからない)ウエートトレーニングを続け、なんとか7~8割まで戻ってきた。大会までには10割に戻せるように努力しています」
荒木田にとっては4年ぶりの世界選手権となるが、前回(ラスベガス)は忘れたくても忘れられない大会となった。「あと1勝でオリンピックの出場権を得ることができたけど、モンゴルの選手に負けてしまった。僕は根に持つタイプ。あの時は、もっと練習すれば良かったと思いました。そういう(甘い)姿勢が最後に出たんじゃないですかね。あの時の悔しさを忘れず絶対に勝つという気持ちでマットに上がりたい」
気がつけば、今回フリースタイルの代表チームの中では最年長という立場になった。荒木田は「世界を見渡しても、ベテランの部類に入ると思う」と付け加える。「自分の階級を見ても、知っている人たちはどんどんやめている。裏を返せば、僕にはそれだけの経験がある。その経験を今大会でも活かしたい」
得意なスタイルはスタミナ勝負のレスリング。今回、荒木田は「最初から最後まで攻めたい」と公約した。「最初は逃げて最後に攻めようとすると、(点数差が開いていたら)追いつくのはちょっと厳しい。だったら最初から攻めた方がいい」
今年4月のアジア選手権は、悪い例を具現化したような一戦だった(タジキスタン代表に初戦で敗退)。「あの時は自分が勝っている状態で逃げてしまった。最後まで攻め続けていれば、相手にスキを見せずに終わるんじゃないかと思う」
昨年優勝のゲノ・ペトリアシビリ(ジョージア)とは、まだ練習でも肌を合わせたことがない。「組み合うのが上手な選手。下がってしまったら足に手が引っかかってしまう。フリースタイルの選手は基本的に差されるのが苦手。差しまくって前に出たい」
同2位のデン・ジウェイ(中国)とは過去に闘った記憶がある。「すごく力が強い。ただ、その一方でスタミナはない。最初から前に出て、取られなければ勝機はあると思う」
他にマークするのは、前回3位のニコラエス・グウィアズドウスキ(米国)や2016年リオデジャネイロ・オリンピック優勝のタハ・アクグエル(トルコ)。荒木田の目標は銅メダルを獲得して東京オリンピックの出場切符を勝ち取ること。そのためには前述した4名のうち、最低でも1人には勝たないといけない。「ここまで来たら、後ろを向くわけにはいかない。やれることをしっかりやって結果を残します」
年齢を考えれば、ラストチャンス。決戦の日までに肉離れは完治しているか。
2019年世界選手権=東京オリンピック第1次予選(9月14~22日、カザフスタン・ヌルスルタン) | |||
男子フリースタイル125kg級代表・荒木田進謙(athketic camp LION) 1988年3月26日生まれ、31歳。青森県出身。青森・光星学院高~専大出。180cm。高校時代の2004・05年に2年連続で高校三冠王を獲得するとともに、2年連続で全日本選手権2位。専大に進み、1年生で全日本学生選手権、全日本大学選手権、国体で優勝。その後も国内の第一人者を続け、2010年アジア大会3位、2015年世界選手権8位と躍進したが、オリンピックの出場はならなかった。2017年に現役復帰し、2018年はアジア大会へ出場した。 |
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略歴(詳細) | JWFデータベース | UWWデータベース | 国際大会成績 |
男子フリースタイル125kg級・展望 / 5位以内がオリンピック出場枠獲得、3位以内は協会規定により日本代表に内定 |