※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治、撮影=矢吹建夫)
最優秀選手賞の副賞であるマウンテンバイクを手にした茂呂綾乃(愛知・大府北)
6月8~9日、茨城県水戸市のアダストリアみとアリーナで行われた第45回全国中学生選手権。女子66級では茂呂綾乃(愛知・大府北3年)が3年連続優勝を達成。女子で史上9人目、男女を通じて史上14人目という偉業を達成するとともに、最優秀選手賞(沼尻直杯)を獲得した。
同賞の賞品であるマウンテンバイクを贈られ、アリーナをウィニング・ランした茂呂は、照れくさそうな笑顔を浮かべながら大会を振り返った。「練習でやっていたことを、いつもは緊張してあまりできないけど、今回は『失敗してもいいや』という気持ちでやったら、いつも以上にいい感じでできたかなと思います」
初戦となった準決勝では武田杏(群馬・笠懸2年)を相手に連続してローリングを決めてわずか24秒でテクニカルフォール勝ち。続く斎藤凛(山形・米沢五3年)との決勝もタイミングのいい飛び込みタックルでテークダウンを奪うなど48秒で撃破するという圧倒的な強さを見せつけた。
「高校に進学してもこのくらいの階級でやることを考えています。今だったら68㎏級ですかね。身長はまだ伸びています。今158㎝くらいなので、せめて160㎝はほしい」
東京都足立区で生まれ育った。レスリングは4歳で地元に近いBRAVEでスタート。その後、AACCに移り、中学2年から大府市へ。現在は至学館大学・高校の寮で生活しながら同校のレスリング部で練習し、現地の中学に通う。
決勝も48秒で快勝だった
ポテンシャルの高い選手であることは誰もが認めるところだが、素顔は多感な中学3年生。茂呂はホームシックになることを隠さない。「久しぶりに親に会うと、別れる時とか、ちょっと寂しいと思う。そういう時には『何のために大府に行ったのか』と自分に言い聞かせるようにしています」
目標は2024年パリ・オリンピックでの金メダル獲得。それまでにどこまで強くなれるのか。楽しみで仕方がない。「今のオリンピック選手のように、たくさん技を持っているわけではない。基本で闘っている感じがします」
憧れの選手を聞くと、茂呂は吉田沙保里さんと即答した。「沙保里さんみたいになりたいと思ってやっています。(近い将来)いつも練習を見ていただいている土性沙羅さんみたいに世界で闘っていけたらと思っています」
練習で土性選手と当たった時の手応えは? 「タックルに入ったら、はね返されてしまいます(微笑)。高校生になったら頑張って一本とりたい」。AFTER 2020 TOKYOの闘いはすでに始まっている。