※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=樋口郁夫)
元全日本チャンピオンで世界選手権に出場したこともある関川博紀監督(新潟・新潟北高~日体大卒)が2013年に創部した八海(新潟)が、2度目の出場ながら、県1位チームとしては初めて学校対抗戦に出場。初白星を挙げ、王者・日体大柏(千葉)に挑むまでに成長した。
そこで敗れてベスト8進出はならなかったが、選手として遅咲きだった関川監督は「私と同じで、じっくり強くしていきます」と、今後の展望を語った。
個人戦では2015年に県チャンピオンを輩出し、全国大会に挑んだ(関連記事)。それから4年。学校対抗戦で県を代表するチームにまで成長した。51kg級は不在で、メンバー6人のうち5人が1年生(新2年生)のチーム。高校に入ってからレスリングを始めた選手が半分という中で、初戦(2回戦)は盛岡工(岩手)に5-2で勝利。「勝った試合はすべて第1ピリオドでの勝利。ちょっと驚きましたね」と振り返る。
続く日体大柏との闘いは、「胸を借りるつもりで挑みました」という。王者との実力差は大きかったが、「(日体大柏が)メンバーをほとんど落とさず本気の勝負をしてくれたことに感謝します。全国トップの力を肌で感じることができ、選手にとっても、私にとっても、いい経験でした」と振り返った。
その中で、60kg級の山賀秀が白星を挙げた。「強くなりたい」との思いで、新潟市から関川監督を頼って同校に入学。監督の家に下宿して頑張っている選手だ。「リーチの長さを生かした攻撃的な選手。勝ててよかったです」という言葉には、自分のやってきた練習の方向が間違っていなかった手応えが含まれていることは言うまでもないだろう。
群馬県との県境に近い地にあるので、出げいこの行き先は群馬県の方が多い。時に監督の母校の日体大、時には岐阜県にまで足を伸ばし、大学選手の胸を借りた。「ボコボコにされることも多いですが、どういうことをすれば強くなれるのかを感じることが、そのあとの練習の動力源になってくれたかな、と思います」。他の高校からの出げいこと一緒になることもあり、高校生間でのライバル意識が芽生えて「成長につながったのかな」とも言う。
個人戦では全国5位の選手もいたが、団体戦での全国大会初白星は別の意味で喜びが大きい。しかし、「これで満足はしてほしくない」と、本当の勝負はこれから。将来を見越してキッズクラブ(八海キッズ)を創設し、一貫強化を目指している一方、「高校に入ってからレスリングを始める選手も大事に育てていきたい」と言う。
体重制でやるレスリングは「だれでもチャンスがあるスポーツです」と言うのが信念。自身は強豪に阻まれてなかなか芽が出ず、大学時代はタイトルを手にできなかったものの、卒業してから全日本王者に輝いた大器晩成選手だ。「簡単に勝てなかったですけど」に続いた言葉が、冒頭の言葉だ。「あきらめずにやっていけば、必ず勝てる」が選手によく言う言葉だという。
卒業生の一人は4月から日体大の4年生になる。他に、法大や中京学院大にも進んでおり、いずれ母校の強化に貢献してくれることだろう。新潟県の新たな歴史が始まっている。