※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
パキスタンの「The News」によると、同国レスリング協会は財政難のため、4月23~28日に中国・西安で行われアジア選手権に男子フリースタイル1選手しか派遣しないことを決めたという。同協会のアルシャド・サター専務理事は「私達は金がなく、政府からの支援もまったくない」とコメントしている。派遣されるのは、昨年のコモンウエルス大会の男子フリースタイル86kg級で優勝したムハマド・イナム。2017年のアジア・インドア&マーシャルアーツ大会では5位に入賞していた。
同専務理事は「アジア選手権に出場できないことは東京オリンピックの予選である世界選手権(9月・カザフスタン)にも出場できないことを意味する(注=大陸選手権に出場した選手数までしか世界選手権には出場できない規則がある)」と話し、「このスポーツ(レスリング)は死につつある」ともコメントしている。
現在、パキスタン・スポーツ・ボードに対し財政援助を求めているというが、同国はクリケットが国民的スポーツであり、他競技に対する支援は少ないという。来年3月のオリンピック・アジア予選に出場するには、同2月にあるアジア選手権(場所未定)に出場しなければならず、この状況では同予選にも何人出場できるか分からない。
パキスタンは、かつてはアジア選手権やアジア大会でのチャンピオンもいて、1979年と1988年にはアジア選手権を開催したほどレスリングが盛んだったが、1996年アトランタ・オリンピックに代表選手を輩出して以来、オリンピック出場選手はいない(宗教上の理由によって男子のみ)。
最近では、2010年の南アジア大会で優勝者を輩出し、2017年アジア・カデット選手権でも2位の選手が生まれるなど復活の兆しがあるだけに、無念の状況と言えよう。現在、日体大に千葉・日体大柏高校卒業のアビッド・ハルーン選手が在籍し、昨年の世界ジュニア選手権に出場するなどオリンピック出場を目指して奮戦している。