※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
女子の全日本チームが3月8日、東京・味の素トレーニングセンターで合宿をスタートした。約1ヶ月半後となったアジア選手権(中国・西安)へ向けての練習と全体の底上げを目指す両面での合宿となる。
笹山秀雄・女子強化委員長(自衛隊)は「アジア選手権は年度初めの大きな大会。全階級でメダル獲得を目指す」ときっぱり。昨年のアジア選手権(キルギス)は全日本チャンピオンと2位選手の混合チームだったが、今年は全階級で全日本チャンピオンが出場することになり、結果が求められる大会。その重圧も予想されるが、「楽しみの方が大きい。若い選手も出てきたし、どこまでできるのか。どの階級の選手も最低限メダルは取れる力を持っている。金メダルを目指して頑張らせたい」と言う。
今年に入ってから日本女子はヤリギン国際大会(ロシア)とクリッパン女子国際大会(スウェーデン)に出場している。2大会の結果と内容を見て、重量級は厳しい闘いを覚悟しているようだが、ヤリギン国際大会76kg級で優勝した皆川博恵(クリナップ)の闘い方を見本として勝利を目指させるという。
合宿に参加している若手選手には「がむしゃらにやってほしい。強い選手が相手でも引くことなく向かっていくことが大事。それがなければ、実力が伸びることはない」と要望した。
昨年に続いて全日本チャピオンとしてアジア選手権に挑む50kg級の入江ゆき(自衛隊)は、「楽しみです」と大会が待ち遠しい様子。2015年大会では見事に優勝しているが、昨年は3位、8月のアジア大会は2位だっただけに、チャンピオンに返り咲いて世界へはばたきたいところ。全日本選手権で優勝したあとは「自分のスタイルを貫けるよう、基本をしっかりやってきました」と言う。
入江の場合は、アジア選手権より、その後にある世界選手権の国内予選の方がし烈と予想されるが、「まず目の前の大会です。1試合、1試合を頑張っていきたい」と話した。
入江のモチベーションのひとつが、3姉妹で今年の世界選手権に出場し、東京オリンピックに出場すること。53kg級の入江ななみ(福井県スポーツ協会)、59kg級の入江くみ(九州共立大)とも昨年12月の全日本選手権は2位に入っており、今年の世界選手権代表が見える位置にいる。今回の合宿には3人がそろい、「お互いにアドバイスをしつつ、頑張っています」と言う。
入江ななみは昨年、クリッパン女子国際大会とポーランド女子国際大会で優勝。世界で通じる実力をもって、55kg級世界一から階級を下げてきた向田真優(至学館大)に挑んだが、6-8とあと一歩及ばず、全日本チャンピオンを逃した。「最初から攻めていたら勝てた試合。(相手は世界チャンピオンだが)気持ちの部分では負けていませんでした」と振り返る。
それだけに悔やまれる一戦。スタートから攻められなかったのは「練習量が足りなかったからかもしれません」と反省し、練習量を増やすとともに「3姉妹で世界選手権に行くことを目標にして、この冬を頑張ってきました」と、6月の全日本選抜選手権に照準を合わせている。
入江くみは負傷から復帰した昨年、ブランクをものともせず全日本学生選手権と全日本女子オープン選手権で優勝。日本一を射程距離に置いていたが、全日本選手権では年下の選手(稲垣柚香)に不覚を喫した。「日本最高レベルの大会に出るための気持ちづくりができていなかった」-。
それでも「負けて覚えることもたくさんあります。負けたことで気づいたことがあり、もっと強くなるヒントも得ました」と前向きにとらえている。この後はオリンピック階級の62kg級に上げる予定で、全日本選抜選手権の予選会同級に出場し、オリンピックへの道を目指すという。
この日は57kg級全日本チャンピオンの伊調馨(ALSOK)に気迫十分で挑み、ゴービハインド(バックを取る)のシーンも。「(伊調は)技が正確でタイミングもうまい。私のミスを逃さずに自分のポイントにする」と舌を巻くことばかりだが、「自分のレスリングをやることを考えて挑みました」とのこと。体力だけでは勝てないことを痛感し、「技を覚えて頑張りたい」と何度でも挑む腹積もりのようだ。
合宿は14日まで行われる。
※本合宿は競技力向上事業の助成を受けています。