※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=布施鋼治)
3月16日(土)~17日(日)のワールドカップ(ロシア・ヤクーツク)を控えた男子フリースタイルの全日本チームが3月7日、東京・味の素ナショナルトレーニングセンターで直前合宿をスタート。練習を報道陣に公開した。
昨年の大会は3位に入賞している日本だが、西口茂樹・強化本部長と井上謙二監督(男子フリースタイル強化委員長)は「厳しい闘いになる」と口を備えた。その根拠は? 井上監督は「去年はロシア、イラン、トルコが出ていない中での3位入賞だった。今年はその3ヶ国とも出場してくるので、よりレベルの高いワールドカップになると思う」と説明。そのうえで、「そこでメダルを獲得できれば、日本チームの自信につながるでしょう。最低でも5位以内を目指したい」と話した。
西口強化本部長は「厳しい闘いだからこそ力がつく」と、試練の国際大会という位置づけをした。「もつれた時に1点をとれるかどうか。守って勝ちたいところでも、もう一回攻められるかどうか。そういう闘いになってくると思う。どんな状況になっても、自分の力を出し切れるようにしてほしい」
この大会は、昨年の世界選手権の国別対抗得点で1~8位の国が参加でき、予選リーグは4チームずつに分かれる。各予選リーグの同じ順位同士で順位決定戦も行われるので、試合は計4回もある。西口強化本部長は「負けても次の試合があるという形の中で得られるものは大きい」と説く。「普通は負けたら終わりだけど、ワールドカップでは強豪国の選手とたくさん試合ができますからね」
この公開練習では、問題点も露呈してしまった。けがをしている代表選手が多かった。昨年の世界選手権で優勝した65㎏級の乙黒拓斗(山梨学院大)は1週間ほど前に右ひざに菌が入り、腫れ上がってしまって、今は1日2回点滴を打っているという。「朝起きた時に痛くて、足を引きずっているような状態なので、歩きづらい」と言う。
当然、この日は別メニュー。トレーナーの指導のもと、バランスボールやチューブトレーニングで調整した。経過は良好だが、乙黒は「ワールドカップにはギリギリ間に合うかどうかという状態」と打ち明けた。
74㎏級の藤波勇飛(山梨学院大)もけがを押しての出場となる。西口強化本部長は「藤波選手は『全て闘う』と言っているけど、逆に、そこはこちらからブレーキをかけます。ワールドカップも大事だけど、我々はその次にある4月のアジア選手権(中国)にも重きを置いている。アジアで問題なく勝てるのであれば、次のステップ(世界選手権)に進むことができる」と話した。
57㎏級の高橋侑希(ALSOK)も、前日に偶然のバッティングで左前頭部を切ってしまって2針縫ったので、この日はウエートトレーニングを中心とした調整に徹していた。「本当はスパーリングをやりたかったけど、昨日の今日では、さすがにまずいということで、やめておきました」
今大会に課した高橋ならではのテーマもある。昨年からスタートした当日計量の場数を踏みたいと思っている。「どの選手もそうだと思うけど、前日計量とは感覚が違う。ワールドカップは2㎏オーバー計量なので、その中でどうコンディションを作っていくか。リミットで試合をするのとは感覚が違うので、勝っても負けても、あくまで(アジア選手権や世界選手権に向けての)目安として挑むつもりです」
この冬、零下40度まで下がる日もあったという極寒のヤクーツクで、日本チームは結果と成果を残すことができるか。
なお、74kg級に三輪優翔(日体大)が参加することになり、65・74・125kg級で2選手ずつの計13選手が12日に現地へ向かう。
※本合宿は競技力向上事業の助成を受けています。