※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
──そういった強化をはかりながら、最終的に代表選考をしなければなりません。ここ何回かのオリンピックは、代表選考を巡って直前のごたごたがあった。まずは選考基準を明文化することが不可欠になってくると思います。2019年の世界選手権(カザフスタン)で男女とも3位以内に入ったら、オリンピック代表に内定?
赤石 はい。そのルールは通達済みです。
──以前のように、同年12月の全日本選手権出場をもって代表に確定させますか?(注=正式には日本オリンピック委員会の承認によって決定)
西口 いや、まだそこは明文化されていないので、なんとも言えません。けがをした場合、レスリング協会のドクターが「オリンピックまでには間に合わない」と判断したら変更する可能性はあります。
──今年の世界選手権で全階級の出場枠を取る、が理想だけど、現実問題として、アジア予選と世界予選を目指す階級が出てくるでしょうね。
西口 基本的に、全日本選手権で優勝した選手をアジア予選(2020年3月予定)に出します。その選手がけがをしてアジア予選に出られないということになったら、2位を出す。そして2位の選手が代表枠をとってきたら、1位の選手とプレーオフを行う。
赤石 そこまでは決めています。いずれ協会から正式に公示されるでしょう。
──メダル獲得を期待される新旧の世界チャンピオンが、何らかの形で全日本選手権で優勝できなかった場合、救済措置は考えていますか?
西口 救済するルールを決めておけば問題はない。加えた方がいいなら加えます。我々の頭はそんなに固いわけではないので(微笑)。ただ、けがでアジア予選に出られないという選手は、そもそも無理。そうじゃないですか?
──おっしゃる通りだと思います。
西口 今は、勝てばいい、という時代ではない。みんなが納得するやり方でやらないといけない。そこのところは気をつかいます。
──2019年はマスコミの取材攻勢も多くなると予想されます。中には行き過ぎた取材をする媒体も出てくる恐れもありますが、そのあたりはどう思っていますか?
赤石 取材は基本的に受けてもらいます(キッパリ)。ただ、その前に何をしゃべったらいいのか、何をしゃべったらいけないのかということを、しっかり勉強してもらわないといけない。昔、女子ではマスコミ対応の勉強会をやったことがあるんですよね。すでに柔道はこの手の勉強会をやっていると聞きました。いまは世代も変わり、対応の仕方がわからない選手もいると思うので、男子も含め早急に対応したい。
西口 知らない仲ではないから、マスコミとはお互いWIN-WINの関係(自分も勝ち、相手も勝つ=双方にとって有益な状態)でありたい。各メディアのレスリング担当者もある程度分かっていて、「こういう聞き方はやめてほしい」とやんわりと釘を刺すと、分かってくれる人が多い。
──プロ野球で中日や楽天を日本一に導いた星野仙一監督(故人)は、「マスコミも戦力だ」と言って担当記者を大事にしていました。日本レスリングの父・八田一朗さんもマスコミに対しては門戸を開放する姿勢を貫き通しました。
西口 これからも、そういうスタイルで行かないとね。ただ、選手は想像以上にデリケートであることは理解してほしい。特に女子はそう。
赤石 代表が決まったら、取材を受けたい派と受けたくない派がいることを、こちらも把握しておかないといけなくなるでしょう。
西口 もうひとつ、いいですか。「2024年のパリ・オリンピックのことも考えて強化してほしい」という意見もあるけど、先のことまで考えたら東京のプレッシャーに勝てるわけがない。
赤石 東京で成果を上げないと、次はないですからね。
西口 リオデジャネイロの時、僕は監督という立場だったけど、グレコローマンで2人しか連れて行けなかったことが心苦しかった。予選であとひとつ勝てば行けた選手もいましたからね。東京オリンピックには全員を連れて行くつもりでやっていきたい。
──シビアに考え、今年の世界選手権では何階級でオリンピックの出場枠(5位以内)を取ることができると思いますか? 理想は18階級ですが。
赤石 女子はもちろん全階級で取ってほしい。男子はフリースタイル、グレコローマンとも最低でも4つずつは取りたい。軽量級には頑張ってほしい。
西口 世界選手権でどれたけの出場枠が取れるか。その成績によって、それからの強化の仕方も変わってきますね。
(終わり)