※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
《JWFデータベース》 / 《UWWデータベース》 / 《国際大会成績》
《勝者の素顔=JWFフェイスブック・インスタグラム》
(文・撮影=布施鋼治)
「ベスト8を目標に設定にしていたら、きっとその前に負けてしまう。世界選手権の目標は優勝しかありません」。女子65㎏級で世界選手権に挑む源平彩南(至学館大)は、力強く宣言した。
土性沙羅(東新住建)の負傷欠場による代表選考試合に勝って68㎏級で出場した8月のアジア大会は、3位決定戦で敗れて5位に終わっている。「体重は足りないくらいだったので、(減量することのない)いつもと変わらない体重で出場しました」
2回戦では2014年アジア大会(韓国)の75㎏級で優勝しているゾウ・フェン(周鳳=中国)と対戦する機会に恵まれた。「強かったです。最後は、自分が甘いタックルに入ってしまってバックに回られ、彼女が得意なローリングを決められてしまった」
3位決定戦に回った源平はキルギスの選手を思い切りリフトして観客をどよめかせたが、ポイントに結びつけることはできず、逆にグラウンドでバックを取られてメダルを逸した。彼女にとっては、ビッグポイントのチャンスが一転してピンチになった初めてのケースだった。
「持ち上げて落とすか、それとも持ち上げないで前に出てポイントをとるか。紙一重な場面だったけど、本当にもったいなかった」
一方、世界選手権に向け、「このままの自分だったらダメ」と強く思えるようになったことは大きな収穫だった。「アジア大会のままの自分だったら、世界選手権でも負けてしまうことがよくわかりました」。アジア大会では、尊敬すべき先輩・土性から習った技を使うことができたのも収穫だった。「ゾウ・フェン戦で使った腕とりからバックへ回るテクニックなどは教えてもらったものでした。世界選手権でも使いたい」
源平の課題は技が単発に終わりがちになるところで、コーチからも指摘されている。「技がブチブチ切れないように、しつこく行かなければいけないところは、しつこく行けるように指導していただいています」
源平の身長は158㎝。アジア大会では目立って小さかったが、65㎏級でも小さな方であることに変わりはない。「どの階級でも、自分はいつも一番小さい(苦笑)。海外の選手はみな減量で大きなところから落としてくる。なので、みな私より大きいし、力も強い。でも、そこは慣れているのであまり気にしていません」
大型の外国人選手に対して、源平はタックルとパワーで対抗しようとしている。「私は正々堂々と正面から入るハイクラッチが得意。さらに磨きをかけたい」
レスリングを始めたのは小学校3年生の時。それから小学校6年生まで続けたが、ほとんど遊び感覚で、試合に出場しても勝ったことは一度もなかった。初白星は安部学院高校に進学し、本気でレスリングをやるようになってからだ。
「自分はどんくささの塊。才能はあまりないと思うので、毎日テーマを決めて練習するように心がけています」。遅咲きの星は、初めての世界選手権で東京オリンピックまでの道標を見つけることができるか。