※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(注)荒木田進謙の所属は、これまで「Wrestle Academy」としてきましたが、アジア大会から「athletic camp LION」とします。
(文=布施鋼治)
男子フリースタイル125kg級の荒木田進謙は今春、地元・青森県八戸市から東京に戻ってきた。「練習場所を確保できたので。東京オリンピックを目指すという覚悟を決めてきました」。それに伴い、所属先は青森県レスリング協会から「Wrestle Academy」へと変更になったが、この名称は暫定的なもので、先日、「athletic camp LION」に正式決定したという。
「athletic camp LION」とは、新日本プロレスとニッポン放送がタッグを組み、東京都江東区有明にオープンしたキッズ・レスリングやボルダリングなどを扱うスポーツクラブを指す。荒木田は日体大でコーチを務めていた井上貴尋氏とともにキッズ・レスリングの担当コーチに就任した。
「すでに事業はスタートしていて、The Third Generation Clubという、プロレスラーが子供がなりたい自分になるようにサポートするクラブもあります」
復帰して6ヶ月で迎えた昨年12月の全日本選手権で優勝。手応えを感じたが、今年6月の全日本選抜選手権と世界選手権代表決定プレーオフでは成長著しい山本泰輝(拓大)に連敗を喫した。敗因を聞くと、荒木田は直前に手術したことを打ち明けた。
「4月のワールドカップ(米国)が終わってから、左ひざの手術をしたんですよ。半月版のクリーニング手術で、ささくれだっていた骨のトゲのような箇所を全部きれいにしました。6月上旬から練習を再開したので、正味2週間くらいしか追い込めなかった。そのせいでスタミナにちょっと問題があったんだと思う」
荒木田は過去2度もアジア大会に出場しているので、4年に一度の大規模な総合大会の雰囲気に呑まれる心配はない。「2010年に初めて出た時にはあまり落ち着きがなかった。でも、2014年に出た時には最年長ではなかったけど、年齢的に上の方になっていたので、落ち着いて自分のやるべきことができた。それで3位になったのかなと思います」
この銅メダルは、フリースタイル最重量級としては36年ぶりのメダルだった。印象に残っているのは準決勝で実現したダウレット・シャバンバイ(カザフスタン)との一戦だ。「試合前は全然歯が立たないと思っていたけど、実際にやってみたら自分のいいところを結構出せた。ただ、それがポイントには結びつかなかった」
シャバンバイ戦後、荒木田は悟った。「トップ選手との闘いでも、自分が集中して臨めば、五分まではいける。自分で取ることができたら、勝つところまでもっていける」
結果的に、2014年のアジア大会は荒木田に大きな自信をつけさせる大会となった。「今回のアジア大会も2年後のオリンピックに大きく影響してくると思う。最低でもメダルを獲っておかないと、オリンピックに出場することすら危うくなってくるでしょう」
今回のアジア大会でマークする選手を聞くと、荒木田はウズベキスタン、イランの名をあげた。「2011年のトルコでの世界選手権では、今はウズベキスタンに国籍を変えたジョージア出身のダビト・モジマナシャビリにボコボコにやられた。体力とか落ちいていなければ、アジアでは間違いなく彼がトップだと思いますね」
今年3月に行われたアジア選手権(キルギス)ではひざのけがもあって成績は振るわなかったが、1回戦で辛酸を舐めさせられたナチャグスレン・ゾルボー(モンゴル)にリベンジするチャンスをうかがっている。
「自分がオリンピックに出るには、モンゴルと韓国に勝たないといけないと思っています」。げん(縁起)のいい大会で、オリンピック出場の手応えを感じることができるか。