※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
ダウン症と自閉症のある人のレスリング交流戦、「第10回ワクワクワセダカップ」が7月22日、早大レスリング場で行われた。参加チームは、ワセダクラブ、京都八幡クラブ、大楠ジュニア、クリナップクラブの4チームで、昨年より2選手増えて22選手が参加した。
1996年アトランタ・オリンピック銅メダリストの早大・太田拓弥監督が、ダウン症や自閉症のある人向けに13年前に立ち上げたワクワクレスリング。その大会の「ワセダカップ」は今年で10回目の節目を迎えた。
以前は各グループに分けてトーナメントを行っていたが、今大会からグループ内での総当たり戦が基本となった。過去には、選手の体調や気持ちの問題で、進行に大幅な遅延がある時代があったが、近年は選手のメンタル面も落ち着き、滞りなく試合進行が進み、追加で敗者復活戦や、特別マッチを追加する余裕のある大会もあった。
今大会は各選手が基本的に複数回、試合ができるように総当り戦を取り入れた。初戦で勝っても負けても優勝の望みがある。選手たちも気合が入ったのか、全試合通して白熱した内容となった。大会MVPはDグループで4位だったものの、試合内容などが評価され久保田歩帆選手(ワセダクラブ)が受賞した。
また、第1回からワセダカップの皆勤賞の選手には特別なメダルを授与した。該当者は6人。保坂晃弘(京都八幡)、山下泰人(京都八幡)、久保田歩帆(ワセダクラブ)、加藤大樹(大楠ジュニア)、土橋剛(大楠ジュニア)、手塚慧介(大楠ジュニア)の各選手に特別な記念メダルが贈られた。
今大会、目を引いたのはメーンレフェリーを現役世界女王の須﨑優衣(早大)が務めたこと。4月に同大学に入学した須崎は「以前から協会のサイトなどを見て、ワクワクレスリングのことは知っていました。入学したら関わってみたいなと思い、コーチとして月1度参加しています。ワクワクの方たちは、純粋にレスリングが好きな気持ちが強いので、毎回自分も刺激をもらっています」と目を輝かせていた。
実はレフェリングも初めて。世界チャンピオンの初々しいレフェリングも見どころの一つだった。
全試合終了後は、表彰式のプレゼンテーターとして参加した2008年北京オリンピック銀メダリストの湯元健一・日体大コーチ(全日本コーチ)と須﨑のスペシャルデモストレーションを開催。お互いに得意技を展開し、選手たちからは歓声が上がった。
最後は、湯元コーチが現役時代に得意としていたタックルからのアンクルホールドの連続技を決めると、太田監督が「あれだけアンクルホールドを練習したのに、今回、みんな試合で出さなかったね」と苦笑しながらダメ出し。次回への課題に挙げた。
参加した湯元コーチは「ワクワクレスリングの立ち上げ当初から関わらせていただきましたが、ここ数年は間があいていまいました。しばらく見ないうちに、レベルがすごく上がっていてびっくりしました」と振り返った。
そして、「レスリングって、闘う競技だから、選手たちは『怖い』という気持ちがあると思う。それなのにマットに向かって闘っている。これがレスリングの原点ですね。私は今、ナショナルコーチをやらせてもらっているけど、この立場でも彼らから学ぶものがたくさんあります。自分の所属選手にも見せてあげたい。このような活動をもっと普及させていきたいと思います」と感想を述べ、機会があれば次回は家族総出で参加する意欲も見せた。
(各部門の成績と表彰式写真は最下段へ)
▼Aグループ [1] 新谷幸太郎(ワセダクラブ)、[2] 市川太郎(京都八幡)、[3] 吉川龍三(京都八幡)、[4] 土橋剛(大楠ジュニア)
▼Bグループ [1] 高野翔(クリナップキッズ)、[2] 大塚亮太郎(ワセダクラブ)、[3] 松川恭弘(京都八幡)、[4] 加藤大樹(大楠ジュニア)
▼Cグループ [1] 吉田速人(クリナップキッズ)、[2] 名切祐介(京都八幡)、[3] 手塚慧介(大楠ジュニア)、[4] 山下泰人(京都八幡)
▼Dグループ [1] 安部健太(ワセダクラブ)、[2] 正木扶(ワセダクラブ)、[3] 保坂晃弘(京都八幡)、[4] 久保田歩帆(ワセダクラブ)
▼Eグループ [1] 関将大(ワセダクラブ)、[2]小林優介(京都八幡)、[3] 田島宏樹(ワセダクラブ)、[4] 吉原允(ワセダクラブ)
▼Fグループ [1] 伊藤天太(ワセダクラブ)、[2] 安間汀翔(ワセダクラブ)