※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=八木賢太郎、撮影=増渕由気子)
高校スタートからの関東制覇だ! 関東高校大会の男子グレコローマン92㎏級を制した佐川健(神奈川・磯子工)は、競技歴わずか2年2ヶ月でその快挙を成し遂げた。
中学までは柔道選手。その時にも関東クラスの大会での優勝経験はなかったという。「去年の国体で3位になることができたんですけど、負けて終わりの3位だった。今回、勝って終わることができたということが一番うれしかったです」と、初めて登った表彰台の一番上からの風景を振り返る。
4月のJOC杯は準々決勝で惜敗。今大会前には、組み際でのプレッシャーのかけ方などをコーチ陣に徹底的に仕込まれてきた。決勝で玉岡颯斗(群馬・館林)に2−1で競り勝った一戦はその成果が発揮されたが、「有利な体勢になれた場面が何回かあった(が、無得点に終わる)。もっと上のレベルで勝つには、ああいうところでびびらず、勝負にいかないと駄目だなと思いました」と反省点も口にした。
このあとは8月の全国高校生グレコローマン選手権や国体で自身初の日本一を目指したいという。その胸中には、“高校デビュー選手”ならではの特別な思いもある。キッズレスリング出身の選手たちへのライバル心だ。
「磯子工業は僕以外も初心者ばかり。そこはみんな同じ気持ちですね。『キッズ出身を食ってやる!』っていう(笑)。その負けん気を忘れないことが、うちのチームの強さだと思います」。
ちなみに、決勝のセコンドには92kg級の佐川より一回り大きな男の姿があった。4年前のこの大会で決勝に進出し、卒業後は国士舘大学へと進学したOBの内藤由良選手だ。現在、教育実習のため母校へ“帰還中”で、大会にも同行してきた。実は高校卒業後も「嘱託コーチ」という肩書きで同校に関わってきたという。
「大学の練習や授業の合間を見て、高校の練習にもずっと顔を出していました。今回、初心者の時から知ってる後輩たちがしっかりと結果を残すのを一番近くで見られてよかったです」。
高校時代には、あと一歩のところで全国制覇に届かなかった内藤コーチ。この夏、“初心者集団”である磯子工の後輩の中から“内藤超え”を果たす選手は出現するのか-。大いに期待できる。