※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=樋口郁夫)
新人選手権を含めて初のタイトルを獲得した伊藤昌(国士舘大)
世界選手権代表の山本泰輝(拓大)が3回戦で敗れた125kg級は、伏兵的な存在だった伊藤昌(国士舘大)が優勝。学生最後の大会で、高校(秋田・五城目高)時代から通じて初の全国タイトルを獲得した。国士舘大からは2012年(嶋田大育=74kg級、葈澤謙=84kg級)以来、5年ぶりのチャンピオン誕生となった。
「初のタイトル。すごくうれしいです。学生最後の大会なので、自分のすべてを出し切ろうと思っていました」。決勝は西日本学生王者の山口直人(徳山大)が相手で、柔道で言う大外刈りを2度決め、2度目にしっかりとフォール。中学時代まで柔道をやっていて、こうした技が得意。この大会に向けても「しっかり練習していた」とのことで、勝ちパターンがぴったりはまっての優勝だった。
高校時代はJOC杯カデット・フリースタイル100kg級2位が最高で、高校の大会でのメダル獲得はなし。国士舘大へ進み、1・2年生の東日本学生新人選手権のグレローマン2位などの成績を残したが、優勝には手が届かず、フリースタイルではメダル圏外だった。「ポイントを取り切る力が足りなかったのだと思います」と振り返り、今回は最後まで粘り強く取りにいくことを心がけたという。
得意技で投げ、最後はしっかりフォール
大本命の山本が反対側のブロックで敗れた。「組み合わせがよかったので、最低でも決勝へ行く」という気持ちが、「決勝も勝つ」と変わった。その強い気持ちがよかったのか、終わってみれば4試合すべてでテクニカルフォールかフォールの圧勝優勝。奪われたポイントは決勝の場外ポイントによる1点のみ。「4年間、辛い時もありましたが、最後に結果を残せてよかったです」と、最高の最終学年となったようだ。
ただ、「全日本チャンピオンを破っての優勝でないので…」と、山本を破っての優勝でないことが引っ掛かる。「やはりチャンピオンを破っての優勝がほしい」とのことで、「自分の方が全然弱い。タックルを磨き、筋力アップをして全日本選手権で対戦したい」と話し、約40日後にもう一度勝負の時がやってくる。
卒業後は警視庁へ進み、できるところまでレスリングを続ける予定。スポーツ採用ではないため、レスリングだけをやるわけにはいかないが、「上を目指したい気持ちはあります。まだ頑張りたい」と結んだ。