※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子)
世界チャンピオンの実力を見せた文田健一郎(日体大)
世界チャンピオン、学生界に降臨! 全日本大学グレコローマン選手権の66kg級は、8月の世界選手権の男子グレコローマン59kg級で日本男子勢34年ぶりの金メダリストとなった文田健一郎(日体大)が凱旋出場し、1階級上のハンディを物ともせずに勝ち上がった。決勝は59kg級の学生王者、成國大志(青山学院大)に豪快な投げ技を決めてテクニカルフォール勝ち。圧倒的な強さで最後の学生大会を締めた。
文田は、減量なしの66kg級を制したことを「上の階級でも59kg級の技でコントロールできたことは大きい収穫だった」と笑顔。決勝戦は事実上、59kg級の真の学生王者を決める試合となったが、「成國選手はフリースタイルの選手で、いなしがうまいから警戒していたけど、勝ててホッとした」と胸をなで下ろした。
胸を合わせずに攻撃してくる相手も「想定内」-
スタンドからのそり投げを得意とする文田は、世界選手権でも相手が胸を合わせない対策をとるなど徹底的に研究されていた。国内でもそれは同じこと。文田と対戦する相手は、構えを低くしたり、半身になったりして文田が得意とする形に持ちこまれないようにしていた。
だが、「すべて想定内でしたから」と文田は苦笑い。自分の形と言えるスタンドからのそり投げは「一度もできなかった」と振り返ったが、悲壮感はなかった。今回さえたのは、グラウンドからの攻撃だった。「グラウンドから持ち上げて、胸を合わせて投げ飛ばすというのは何回かできた。グラウンドのルールが復活するので、強化していきたい」と、ニュースタイルの確立に手ごたえを感じていた。
新しい技を体に染み込ませるには時間がかかる。昨年、リオデジャネイロ・オリンピックで銀メダルを獲得した太田忍(ALSOK)に続く逸材として海外選手からマークされると、首投げなど新しい技の習得にも励んだが、「まだまだ付け焼刃状態」と自己評価。そり投げ同様のレベルには達してない。
次の闘いは12月の全日本選手権
新しい技の習得は簡単ではないが、世界チャンピオンになっても発展途上であることは、モチベーションにつながる。「試行錯誤して、新しい技を体に染み込ませています。時間がかかるけど、頑張りがいがあります」と目を輝かせた。
10月上旬に行われた愛媛国体では、太田忍が圧倒的な強さで優勝を果たした。文田は「やっぱり強いなって思いました。負けないように頑張らないと」と気合十分。この1年間、太田との直接対決では、連敗せずに勝ち負けを繰り返している両者。
7月中旬のスペインGPは文田が勝っているので、12月の全日本選手権で勝てば、太田には対しては初の連勝となる。しかし、敵は太田だけではない。
「12月も勝てるように頑張るのはもちろんだけど、僕はずっと忍先輩やほかのライバルたちと切磋琢磨して成長していきたい。59kg級(今後60kg級)を盛り上げていきたいです」と名勝負を繰り広げていくことを誓った。