2017.10.18

【押立杯関西少年少女選手権・特集】“故郷”で審判に挑戦、初心に帰って飛躍を目指す有元伸悟(近大職)

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

レフェリーに挑んだ地元・吹田市民教室出身の有元伸悟(近大職)

 国際特級審判員(現国際1S審判員)が裁いた年もある押立杯少年少女選手権。今年は全日本トップ選手がレフェリーとして参加していた。地元の吹田市民教室出身で、男子フリースタイル61k級で昨年の世界選手権(ハンガリー)に出場した有元伸悟(近大職=現役選手であるため、敬称略)。愛媛国体を終えて帰阪し、疲れも残る中、慣れない役職をこなした。

 審判員の資格は、学生時代に国内C級を取得している。しかし選手としての活動が忙しく、「ホイッスルを吹くことはほとんどなかった」という“ペーパー審判員”。それでいながら審判員として参加したのは、自身も優勝したことのある大会であり、現在でも吹田市民教室には時々顔を出していて、「しっかり恩返しがしたいから」という気持ちからだった。

 「初めて」とも言える審判は、「自分がやっているスポーツとは別の競技みたいでしたね」と苦笑い。シニアとキッズとではルールがいくつか違っているので、“別競技”というのもうなずけるが、「止めるタイミングとかも難しかったです」とのこと。

 自分一人で決めるのではなく、最終的に3人の審判による裁定になるので、チェアマンやジャッジを見ながらの動きとなり、相手だけに集中していればいい選手とは違った状態だったようだ。

昨年12月の世界選手権、吹田市民教室仕込みの強烈なタックルを決める有元

 何はともあれ、レスリング人生の源流に還ったことで、初心に帰れたことは間違いない。昨年は世界選手権に出場したあと、全日本選手権は初戦敗退。今年の全日本選抜選手権も学生選手に敗れて調子が出ず、愛媛国体はチーム事情で65kg級に出場したため、やはり結果を出せないで終わった。

 優勝したこともある大会に参加したことを機に、再度飛躍したいところ。一時は「東京オリンピックでは実施階級」とまで言われた60kg級が実現せず、オリンピックを目指すには57k級に落とすか65kg級に上げるかしなければならない状況に直面しているが、「階級をどうするかより、まずレスリングのレベルアップに努めたい」と言う。

 したがって、先に階級を決めるのではなく、当面、現在の61kg級で闘い、技術を高めて再度の世界選手権出場が目標。だが、そこにも愛媛国体の同級で大学1年生ながら学生王者を破って優勝した乙黒拓斗(山梨学院大)というチャンピオンが誕生し、簡単に勝たせてもらえない状況になってしまった。

 有元は国体で乙黒の闘いぶりを見て、「無茶苦茶強いですね」と舌を巻く。しかし、「多くの強豪がそろってきたので、底上げがなされている。上がったレベルに対応できるようにしたい」と、遅れずについていく腹積もりだ。

 57kg級の高橋侑希(ALSOK)が世界チャンピオンに輝いたことにより、「日本の軽量級は世界で勝てる、と自信を持っていいと思う。国内の闘いを勝ち抜けば世界で勝てると信じ、全日本選手権へ向けて練習していきたい」と話し、“故郷”で巻き返しを誓った。