※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
9月5日からイラン・テヘランでレスリングの指導者を目指す女性を指導していた伊調馨選手(ALSOK)が17日未明、羽田空港に帰国した。「思っていた以上に大変でした」と第一声。選手を指導するとばかり思っていたら、指導者を目指す人を指導することを望まれており、入口からして違っていたから戸惑うのも当然だろう。
選手への指導も、指導者になる人への指導も、根本は同じことかもしれない。しかし、イランでは、“おしとやかさ”が求められるのか、「女性には体育の授業がないようだ」とのこと。それがゆえに、体力がまったくない人もいて、「動きになっていない人もいた。日本のキッズ選手の方が動きや飲み込みがいいですね」と言う。
それでも、失敗を重ね、慣れていくうちにどう教えればいいかがつかめてきた。3日間ずつ3グループに分かれての指導だったが、最後のグループでは「伝え方が分ってきました。もっと細かく教えられるかな、とも思った」と、自身の指導手腕の上達もあった。
イランが推し進めようとしているのは、肌が露出しないクラシック女子レスリングのスタイル。伊調選手もその練習着に身を包んでの指導だったが、現在のテヘランは最高気温が30度ほど。「半袖、短パンに慣れている人間としてはきつかった。エアコンもないので、汗だらけでした」と、これも大変なことだったという。
もともと「レスリング王国イランに行ってみたい」という気持ちがあって実現したイランでの指導。「自身にとっての収穫は?」との問いに、「これだけの環境の中で、やり切れたことです」と振り返る。やり切ったことで教え方が分ってきたのは事実で、「日本での指導は、1日とか2日とか。メンバーは変わっても。こんな長い期間、指導を続けられたことは、今後のためになることです」と話した。
逆に反省点としては、技術を伝えるあまり、「レスリングの楽しさを伝えられなかったかな」ということ。言葉の壁もあってやむをえないことでもあるが、「楽しさを感じなければ続かない。これからは、楽しさを伝えられる指導を心がけたい」という。
世界レスリング連盟(UWW)の理事でもあるイラン協会のラスール・ハデム会長とも会い、このスタイルの普及などについて熱く話していたという。「(世界的な成熟には)30年かかるかな、と言っていた。ピックアップしたコーチを日本に送りたいとも言っていた」とのことで、イランとして、このスタイルの普及に熱を入れるようだ。
ハデム会長はイランの男子の普及と人気獲得についても、素晴らしい行動力を見せているという。最近はサッカーに押されて“国技”の地位も危うくなっているイランのレスリングだが、レスリング王国の意地を感じたイラン遠征だったようだ。