※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

初優勝を果たした柴山(左)と辻監督
(文・撮影/増渕由気子)
4年ぶりの地方開催となった福岡県北九州市で行われた第34回全国少年少女選手権大会は、滞りなく大成功に終わった。そこに花を添えたのが、地元、北九州クラブの6年生男子30kg級の柴山日向だった。柴山は、大会初日の開会式で選手宣誓の大役を務めた一方で、試合でも実力を発揮。相手を終始攻め続けて最後の大会で初優勝を遂げた。
柴山が勝った瞬間、北九州市関係者から拍手と歓声があがった。なんと、同クラブの男子として初めての優勝者だというのだ。辻栄樹監督は「地元開催で優勝者を出せて本当によかった。これまで優勝者は全員、女の子でしたので、男子の優勝はとてもうれしいです」と柴山の優勝は北九州クラブに新たな記録の一ページとなる悲願だった。
柴山は「選手宣誓も試合のどちらも、とても緊張しました。選手宣誓は前日にずっと練習したことでうまくできました。選手宣誓をしたのだから絶対に優勝して結果も出さなくてはいけないと思いました」と振り返る。開会式の大役を立派にこなしたことで、度胸がついたのか、初めての決勝戦でも雰囲気にのまれずに実力を出し切れた。柴山は「地元の大会だったので絶対優勝したいと思っていました。ちゃんと優勝できてうれしいです」と最高の笑顔を見せた。
クラブの先輩にあたる入江ゆき(自衛隊)、ななみ(福井県体協)、くみ(九州共立大)の三姉妹が有名で、女子選手が強いイメージがあった北九州クラブ。辻監督は、「北九州市が大会をやると決めたことで、福岡県をあげて協力体制をとりました」と振り返る。
福岡県にはキッズクラブから高校、大学にレスリング部がある学校が多く、全国でも盛んな県だ。三井高からは池松和彦が2004年アテネ、2008年北京と2大会連続でオリンピックに出場し、全日本チャンピオンクラスの選手も多数輩出している。今大会も九州地方では最高の8チームが出場した。

相手のバランスを崩してバックを奪う柴山(右)
盛んだったが、これまではそれぞれのチームが個々に頑張っている状態だった。「実は、クラブチームや学校の拠点が離れていて、クラブ同士の交流はそこまでありませんでした。けれども、地元でこの大会が開催されることが決まって、他のチームと協力して組織的にも盛り上げ、みんなでメダルを獲ろうという流れになったんです」(辻監督)。
今年1月には合同練習に金メダリストの伊調馨(ALSOK)選手を講師に迎えて合同練習を行い、福岡県のキッズ連盟を発足。月1回程度集まるようにし、保護者たちは大会運営の会議、子供たちは合同練習を行った。今回優勝した柴山も「伊調選手からバックの回り方を教えてもらったことで、うまくできるようになった」と話し、県をあげての強化が実った格好だ。
辻監督は「大会を運営するのは確かに大変だったけど、地元に全国大会が来るということでプラスになったことがたくさんありました。行政が動いてマットを買ってもらえましたし、卒業した生徒の保護者たちも手伝ってくれて一致団結できて、楽しい大会でした」と地元開催にやりがいを感じたようだ。
ただ、一つだけ心残りがある。「地元の小学生や中学生などを招待することを忘れていました。国体とかでよくやってますよね。今度招致するときは必ずやろうと思います」と“次回開催の公約”を掲げた。
福岡県は福岡市と北九州市の2つが政令指定都市となり人口も多い。辻監督はキッズクラブのほかに小倉商の監督も兼任している。「レスリングの普及に拠点を増やすことは重要です。福岡県で幼稚園から大学、社会人まで一貫してレスリングができるモデルケースを作りたい」。北九州市大会を起爆剤にして更なる発展を目指す福岡県だった。