※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
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(文=保高幸子)
山本泰輝(拓大)
今年の世界選手権代表の男子最年少は、大会を20歳で迎えるフリースタイル125kg級の山本泰輝(拓大)。重量級だが、スピードが持ち味、初出場となる世界選手権では「タックルでどんどん攻めて、『日本の重量級は駄目だ』と言わせない試合をしたい」と練習に励む。
山本は2015年の全日本選手権で、この階級をリードしていた荒木田進謙(当時警視庁)を下す大金星をあげた。前年のアジア大会で銅メダルを獲得し、3ヶ月前の世界選手権で8位に入賞していた選手だ。しかし、初めての日本代表として挑んだ翌春のリオデジャネイロ・オリンピックのアジア予選では、全く歯が立たなかった。
「自分がタックルに入ったのに、次の瞬間、上を向いていて、なぜかフォールされていました。これがシニアなんだ…と落ち込みました」。しかし、負けた悔しさをばねに強くなっていくのが山本だ。続く世界予選でも壁を感じたが、その後の全日本選抜選手権で優勝。国体では悔しい敗戦を経験。それ以来、拓大のコーチでオリンピックに2度出場している高谷惣亮(ALSOK)の技術指導を受け、全日本選手権を制した。
5月のアジア選手権・3位決定戦で戦う山本。銅メダルを獲得=撮影・矢吹建夫
「目的を持ってやっているので、練習が楽しい」と山本。7月上旬の菅平合宿では、小平清貴コーチ(警視庁)から片足タックルを集中的に教わっていた。「両足タックルとハイクラッチが多いので、いろんな方に『片足タックルをできるようになった方がいい』と言われていました。自分のものにできるかもしれない、という予感はあります」と、新しい技術の習得にいい感触をつかんでいるようだ。
■「日本でも絶対王者ではない」という気持ちが、努力につながっている!
日本の最重量級は、1996年アトランタ大会のグレコローマン130kg級に鈴木賢一が出場して以来、オリンピック出場がかなっていない。山本は若く、重量級の中ではスピードもある。今度こそ、最重量級選手としてのオリンピック出場の期待がかかる。
しかし、「まだオリンピックのレベルじゃないです。日本でも絶対王者ではない。たまたまいいタイミングで入れて、手が引っ掛かったりして勝っているだけ。国内でもしっかり勝って海外遠征に行けるようにしたい」と、しっかり足元を見ている。
菅平合宿でコーチの指導を受ける山本=撮影・保高幸子
日本でも絶対王者ではない-。昨年12月の全日本選手権優勝というアドバンテージを持ちながら、世界選手権予選となった6月の全日本選抜選手権では準決勝で敗退したことを指している。それでも、決勝のあと行われたプレーオフは山本らしく闘って日本代表の座についた。
昨年の国体と全日本選抜選手権での敗戦は、いずれも「攻めずに負けた」と敗因がはっきりしている。選抜での敗戦後、拓大の西口茂樹部長に「自分から先に攻めなければ駄目だ」と言われ、プレーオフまでの間に心を決めた。「勝ちたいんだ、それしかないんだ」と。プレーオフは言われた通りに序盤から攻め、4-0で勝負を決めた。
世界選手権は「自分が一番下。みんな自分より強い」と言うが、やることは決まっている。「最初からタックルでどんどん攻めたい」。山本らしいレスリングで世界初陣を飾り、東京オリンピックにつなげる。
山本 泰輝(やまもと・たいき=拓大) 初出場 1996年10月18日生まれ、20歳。静岡県出身。静岡・飛龍高卒。182cm。2014年に高校五冠を制覇。アジア・ジュニア選手権でも3位入賞。2015年に全日本選手権で優勝し、リオデジャネイロ・オリンピック予選に挑んだが、勝ち抜くことはできなかった。 その後、全日本選抜選手権で優勝。学生の2大会はカザフスタンからの留学生の壁にはね返されて、ともに2位だったが、全日本選手権で優勝。2017年アジア選手権で3位へ。 |
![]() 2011年全国中学選抜大会で勝ち、中学二冠王者へ |
![]() 高校3年生だった2014年JOC杯、大学生の間を勝ち抜いて優勝 |