2017.07.17

【特集】2017年世界選手権へかける（２）…男子フリースタイル65kg級・鴨居正和（自衛隊）

※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。

《ＪＷＦデータベース》／《ＵＷＷデータベース》／《国際大会成績》／《勝者の素顔＝ＪＷＦフェイスブック》

（文＝保高幸子）

鴨居正和（自衛隊）

　今年の世界選手権（８月21～26日、フランス・パリ）の男子フリースタイル65kg級には、61kg級時代を含めて３度目の出場となる鴨居正和（自衛隊）が出場する。2015年は3位決定戦で敗れ、メダルにあと一歩だった。鴨居は「今年は絶対にメダルを持って帰りたい」と意気込んでいる。

　今年は年始めからスランプに陥っていた。前年12月の全日本選手権で首を痛め、しばらくタックルを封印。回復したものの、感覚を取り戻すのに時間がかかってしまった。「入ろう、入ろう、と意識してしまって、違和感をずっと抱えていた」。

　５月に行われたアジア選手権（インド）では銅メダルを獲得。最低限度の成績だったことは確かだ。準決勝で韓国のイ・スンチョルに負けて落ち込んだものの、３位決定戦では快勝。自他共に認めるスロースターターの鴨居だが、「組み手で追い込んで、崩してタックル、という自分の攻めを最初からできました。格下の相手でしたが…」と及第点の試合ができた。

３度目の世界選手権出場を決め、自衛隊応援席にガッツポーズ＝撮影・矢吹建夫

　ただ、「あの組み合わせだったら、最低でも決勝に行かなければ駄目だった」と満足感はない。その後に待っていたのは、全日本選抜選手権に向けてのいばらの道だった。「練習で後輩にボコボコにされて…。自分のタックルが取り戻せなかった。選抜は駄目かもしれないと思っていました」－。

　鴨居を勇気づけたのは、自衛隊の井上謙二監督（男子フリースタイル強化委員長）。鴨居の様子がおかしいことを見かねてか、「大会の１週間前に食事に連れ出してくださいました。それまでも、よく声をかけていただいていますが、この時、『そうだ、世界選手権のチャンスなんだ、期待にこたえたい』と思いました」と言う。

■2020年東京オリンピックはレスリング人生の集大成

　母校・山梨学院大学の恩師、高田裕司監督を世界選手権に連れて行きたい、という思いも鴨居を後押しした。試合前、小幡コーチから「山梨学院から（現役とＯＢで）3選手が出場したらパリに行くと言っている。連れて行くんだぞ」とはっぱをかけられたという。

菅平での全日本合宿で練習する鴨居＝撮影・保高幸子

　また、家族の力も鴨居を奮起させた。「香川をめったに出ることがない父が、初めて全日本の大会を見にきてくれました。父の日も近かったので、勝つところを見せたいと頑張りました」－。試合内容としてはギリギリだったが、しっかり代表の座を勝ち取った。

　片足タックルで誰からでもポイントを取れるように追求しているという鴨居。「スランプは抜けた」とはっきり言うことはないが、「東京オリンピックは年齢的に最後のチャンス。レスリング人生の集大成となるように、あと3年間、全力で突っ走りたい」と言い、世界選手権で欧州やパンアメリカンの選手と試合できることを楽しみにしている鴨居の表情は、十分に期待を抱かせるものだった。

　「（出身の）香川・高松レスリングクラブのちびっ子たちが頑張れる材料になりたい。自分が頑張っている姿を見せたい。メダルを見せてやりたい」－。世界選手権のメダルを持っての凱旋を実現させる決意は固い。

鴨居正和（かもい・まさかず＝自衛隊）　初出場（通算３度目の出場）
　1992年５月27日生まれ、25歳。香川県出身。香川中央高～山梨学院大卒。167cm。2012年全日本大学選手権60kg級優勝、2013年60kg級学生二冠王などを経て、2014年に世界選手権61kg級に出場。同年の全日本選手権で初優勝。
　2015年は世界選手権で５位となり、65kg級に上げて全日本選手権５位。2016年はアジア選手権５位のあと、全日本選抜選手権と全日本選手権で優勝。 2017年にアジア選手権で３位へ。