※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=増渕由気子、撮影=矢吹建夫) 高谷惣亮(ALSOK)
恒例の優勝パフォーマンスは、お笑い芸人、ブルゾンちえみを彷彿(ほうふつ)とさせるウォーキングを披露。「1月に結婚して、初めての大会。結婚したから弱くなったとか言われたくなかったので、絶対に勝つと、並々ならぬ気持ちで臨みました」と、いつも以上に気合が入っていたことを明かした。
結婚のお相手は3つ下の大学の後輩で、3月から同居。「ありがたいことは、家に帰るとご飯ができていること。これまでは帰ってから自分で作っていましたから」とのろける一面も見せた。
将来が楽しみな若手が顔をそろえるこの階級だが、断トツに強いのはやはり高谷だ。準決勝では昨年覇者の奥井眞生(国士舘大)と対戦するも寄せつけず、第1ピリオドで勝負を決めた。決勝では開始早々にタックルを決められて失点したが、じわじわ相手を追い詰め、最後は8-2と完勝した。
■コーチとしての役割が自分の競技力向上につながっている
今回はテーマを持って臨んだ。「僕も28歳になるので、タックル以外の崩しなども磨いていきたい」と攻撃パターンの拡大を図った。近年は首などを痛めてトレーニングに支障をきたすこともしばしばあり、その対策のためだ。
圧巻だったのはマット上だけではなかった。現在は自分の活動に加えて、母校・拓大のコーチも務め、今回のような大会では“教え子”とともに臨む。そのため、試合を終えた学生たちが、“高谷コーチ”にアドバイスを求めにやってくる。
恒例となった優勝直後のパフォーマンス。視線の先には、だれがいた?
選手兼コーチとして100パーセントをやり抜く姿勢。「僕は東京オリンピックにみんなで行こうと思っている。拓大のコーチですから、そういう覚悟でやっています。僕のところにアドバイスを求めに来る選手は、勝ちたいから」と、自分を頼る後輩には全力で対応するように心掛けている。
それで自分の試合に影響がないのか心配になるが「そのようなことは全くない。むしろプラスのことが多い」ときっぱり。「園田には、『点数を取られたからといって、あわてて取りに行くな』と言いました。決勝で僕も開始早々、失点したときに、園田に言ったアドバイスを思い出し、じわじわ取り返すことができた」。人に教えることで自分自身への戒めにもなり、高谷の競技力向上に一役買っているようだ。
今回の優勝で8月の世界選手権(フランス・パリ)のキップも手中に収めた。2014年に世界選手権2位になってから、早くも3年が経つ。「披露宴を秋ごろ考えている。その時に2つ目のメダルを掲げて登場したい」。新婚パワーでメダルを獲って自ら結婚式に花を添える―。