※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
国際オリンピック委員会(IOC)は6月9日、スイス・ローザンヌで臨時理事会を開催。2020年東京オリンピックで、柔道混合団体、卓球混合ダブルス、バスケットボール3人制などの種目増を承認する一方、レスリングの出場選手数を3スタイルで288選手と決定(男子各スタイル96選手、女子96選手)。昨年のリオデジャネイロ・オリンピックの344選手から56選手も少なくなる“狭き門”となることが決まった。
実施階級数は変わらないため、1階級16選手での闘いとなる(リオデジャネイロは、1階級あたり男子19選手、女子18選手のほか、ワイルドカードによって全体で8選手)。
今回の決定では、陸上が105選手も減らされ(それでも男女で1900人)、2番目の削減競技が重量挙げで64選手減(同196選手)。レスリングの56選手減は3番目の削減数。IOCのトーマス・バッハ会長は、陸上と重量挙げの削減の理由を「ドーピング違反の数。強い警告」としている。
他に減らされたのは、競泳、水球、ボート、セーリング、射撃。レスリング削減の理由は明らかにされていないが、ドーピング違反者は決して多くはないので、不人気競技であるためか、後述する通り、男女同数への努力不足に対する警告であることが推測される。
3人制を導入したバスケットボールは,その分が上積みされて64選手増の352選手となった。
IOCはオリンピック改革で、男女の種目数・選手数の同数化を推進。今回の決定で、東京オリンピックにおいて、全競技における女子の割合は48.8%となる。レスリングは33%で、これはボクシングの28%に次いで低い数字。
多くの競技が男女同数を実現しており、男女の選手数が違うのは、女子の方が多い水泳と体操を入れて7競技(東京のみで実施される野球&ソフトボールを除く)。40%を切っているのは、レスリングとボクシングの2競技だけ。
◎男女の選手数が違う競技
(1)体 操 男子114選手・女子210選手(女子65%)=体操は男女同数、新体操が女子のみ |
種目数となると、ボクシングは、リオデジャネイロでは「男子10種目(階級)、女子3種目」だったのが、今回は「男子8種目、女子5種目」に変更し、女子の比率は38%。対してレスリングはリオデジャネイロと同じく「男子12種目(階級)、女子6種目」で、女子の比率は33%。6種目の差とともに、実施競技中、最低となった。男女で差があるのは5競技だけ。
◎実施種目数に差のある競技
(1)水 泳 男子23種目・女子25種目(女子52%) |
世界レスリング連盟(UWW)では、2013年のオリンピックからの除外騒動以来、人気獲得と男女差の是正に取り組んでいるが、オリンピック競技としての存続のためには、さらなる努力・改正が必要な状況であることが浮き彫りとなった。
IOCが今回の決定について「出場選手と種目の数における男女平等の実現に向けて、大きな一歩だ」と述べていることから(ロイター通信)、男子2スタイル、女子1スタイルという状況を抜本的に変える必要に迫られる可能性も、皆無ではない。
理事会では、2024年夏季オリンピックの招致を争う米国・ロサンゼルスとフランス・パリを24年と28年の2大会に振り分け、同時決定する作業部会の提案を承認した。総会での決議などの手続きが必要だが、24年がパリ、28年がロサンゼルスと決まる公算が出てきた。