※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 栃木県の復活へ挑む栃木・足利工大附高チーム
一方で、栃木県はというと…。振り返れば、オリンピック金メダリストや世界チャンピオンも輩出しているが、近年の成績は振るわず、昨年の岩手国体は33位と低迷した。
今年の関東高校大会でも、男女ともに決勝進出はかなわなかった。男子フリースタイル66kg級の磯次郎と、男子グレコローマン74kg級の田代英才(ともに栃木・足利工大附)の2選手が3位に入賞し、地元の意地を見せたのが精いっぱいだった。
磯と田代はともに柔道出身で、高校からレスリングを始めている。磯は「タックルは苦手ですが、全身使う方が得意なのでフリースタイルを選択しています」と、相手のタックルをつぶしてバックに回るスタイルで3位決定戦を制した。しかし、「(2月の)関東高校選抜大会も3位だった。今回は地元開催ですし、優勝を目標にしていたのに、また3位となってしまった…」と、順位が上がらなかったことを悔しそうに振り返った。
決勝で闘う磯次郎
■37年前の栃木国体は全員が決勝進出! その栄光も、「今は昔」-!
栃木県は2022年に国体を控えている。足利工大附は県の拠点校として強化していくことが決まり、石川利明監督が県全体の強化委員長に就いた。石川監督は「栃木県はフリースタイル出身の指導者が多く、フリースタイル中心の強化をしてきました。国体は両スタイルありますので、今後はグレコローマンを強化していこうという方針になりました」。
2012年ロンドン・オリンピック後には、同グレコローマン代表の斎川哲克コーチが足利工高に赴任し、世界で闘った経験を生徒たちに伝えている。今回は地元開催の関東大会ということもあり、試合前には斎川コーチが足利工大附に赴き、仕上げの指導を手伝ったそうだ。
足利工大附高の石川利明監督と銅メダル獲得の2選手
今から37年前の栃木国体では、全選手が決勝に進出し大いに盛り上がった。当時成年男子フリースタイル48kg級で優勝したのは、強化委員長を務める石川監督だ。教え子の田代は「自分は強い栃木を復活させたいと思っている。今回優勝して“復活”としたかったけど、できなかった。だから、次の大会で頑張ります」。強かった栃木を取り戻したい石川監督の気持ちは、生徒たちにしっかりと届いている。
栃木県はキッズクラブも盛んで、国体を見据えてスカウトも活発になっているという。5年後の2022年に向け、復活の序章となるか―。