※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 19年ぶりに決勝進出を果たした近大
この大勝により、Bグループを2勝1敗で並んだ3大学(近大、中京学院大、立命館大)の中から勝敗差でグループ1位を遂げた。決勝戦に進出するのは19年ぶりのこと。約20年前は西日本リーグ戦で優勝に名を連ねる強豪だったが、ここ最近は優勝から遠ざかっていた。
■全日本選抜王者の有元伸悟コーチからエネルギーをもらう
決勝戦は実績ある選手がそろっている同志社大と対戦。3-3で勝負を託された7番手の125kg級の津山丈証が、序盤に相手をフォールの体勢に持ちこむチャンスを作って先制したが、最後は逆転されてしまった。チームスコア3-4で敗れたが、大いに盛り上がった。
萩原理実監督は「去年の秋季リーグ戦では最下位争いで、二部リーグ落ちの危機だった。今回は出来すぎです。優勝できませんでしたが、私としては優勝に等しい2位です」と感無量の様子。二部リーグ落ちも経験するなどして、厳しい時代もあっただけに、ひしひしと喜びをかみしめていた。
125kg級の津山丈証がフォール寸前まで追い込んだが・・・・
同志社大に強豪が多く集まっている昨今だが、近大もここ数年、スカウトはうまくいっている。出身高校には三重・いなべ総合学園、京都・京都八幡、滋賀・栗東、岐阜・岐阜工などの強豪校が並ぶ。「いいコーチがいて、もともと素質のいい選手が入ってきている。それをコーチたちがしっかり育ててくれる」。
有元コーチのほかに、長尾武沙士&明来士兄弟(ともに近大OBで西日本学生王者を経験)ら複数人のコーチたちによる強化サイクルが確立してきたことも飛躍の要因だ。
■素人監督だが研究は怠らず、高校とのパイプも構築
チームを支える萩原監督は近大の監督になって約20年。人望は厚く、長尾武沙士コーチは「僕が近大に来て、今もここでコーチをしているのは萩原監督がいるからです」と断言する。
そんな萩原監督だが「私ね、実はレスリング経験者ではなく、素人監督なんです」と打ち明けた。スポーツ歴は高校でバスケットボール部で、格闘技経験者でもない。また、中大出身で、近大OBでもない。縁があって近大の職員となり、前監督で現総監督の岡本邦彦氏から監督業を引き継いで今に至る。
近大の躍進を支える有元伸悟コーチ(左)
昔は動画サイトなどがないため、海外からビデオを取り寄せて研究も怠らなかったという。その努力に反して成績は振るわない時期も。レスリングは素人で高校とのパイプもない。「試合に出る選手をそろえるので精いっぱい。時に大学からもらっている推薦枠が埋まらないこともあった」と、スカウトの苦労を振り返った。
■「『まぐれ』と言われないように、次回も優勝争いをしたい」…萩原監督
けれども、萩原監督は辛いと思わなかった。「負けても、レスリングをやって学生と一緒にいることが楽しかったんです。学生はいつも一生懸命でしたから」。コツコツと指導に取り組み、自らマットにあがってレスリング関係者と交流を深めることで、徐々に高校とのつながりもでき、自然といい選手が集まって一部リーグで闘えるチームになっていた。
「今回の準優勝で、学生の練習の成果は十分に出ました。私も達成感でいっぱいです。ありがとうと言いたい。今回が『まぐれ』と言われないように、次回も優勝争いをしたいですね」。
「次は胴上げされたくないですか?」と問うと、最高の笑顔でうなずいてくれた萩原監督。来季も近大の快進撃に注目だ。