※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=増渕由気子) 吉本収監督(左端)、松永共広コーチ(右端)とメダル獲得の選手
約8ヶ月前、リオデジャネイロのマットで日の丸を背負って闘う選手のセコンドについて金メダルマッチも経験した松永コーチ。4月22~23日のJOC杯では、神奈川大のジャージに身を包み、セコンドに就いてひっきりなしに選手にアドバイスを送り続けた。
■今はグレコローマンが強いが、松永コーチの就任でフリースタイルも強くなる!
神奈川大のメダル獲得選手は、男子グレコローマン74kg級で大賀遥が優勝、同級3位に北條良真が入り、50kg級では山口秀斗が2位に入った。松永コーチの専門はフリースタイル。「全部グレコローマンでしたが…」と苦笑しながら、「結果は優勝1名、準優勝1名、3位が1名でした」と初陣を振り返った。
セコンドとして試合を見つめる松永コーチ
神奈川大の印象は「雰囲気がとてもいいと感じました。各選手との面談をしても、全員が目標をもって取り組んでいました」と、育てがいのある選手たちがいることを実感したそうだ。練習も学生主体で動いているようで、練習前に松永コーチとその日の練習メニューについてすり合わせて行っているという。
ナショナルチームの選手と違って、大学生の適応能力はまだまだ。「タックルの処理ができずに止まってしまう選手などは、とにかくできるまで、しつこくやらせます」と、納得するまで張り付いて指導する方針だ。
■群雄割拠に突入した大学レスリング界
神奈川大学はこの10年間、峯村亮(55kg級)や阪部創(75kg級)などグレコローマンで学生チャンピオンを輩出し、今回もグレコローマンで3人入賞。グレコローマンが盛んというイメージがあるが、松永コーチが就いたことでフリースタイルの向上にも期待がかかる。「フリースタイルが強くなったら、『松永が来たからかな』と言われるかな」。
選手にアドバイスを送る松永コーチ
松永コーチは「指導者としての最終的な目標は、自分がかなえられなかった世界チャンピオンの育成です。それと、神奈川大をリーグ戦で優勝できるようにしたい」と、明確な目標も話してくれた。世界選手権やオリンピックでコーチングの腕を磨いた松永コーチのノウハウは「惜しげもなく展開していく」ときっぱり。
今年のJOC杯では、松永コーチの母校でもある大学レスリングの雄・日体大が優勝なしに終わり、専大や青山学院大、明大などからもチャンピオンが誕生。どの大学にいっても強くなれるという群雄割拠の色が出てきた感がある。
松永コーチのノウハウを伝授された神奈川大の選手たちが、フリースタイルでもこの闘いに割って入れるだろうか―。“戦国時代”の大学レスリング界から目が離せない。