※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文・撮影=樋口郁夫) 3兄妹で優勝! 左から泰成(専大)、泰葉、成葉(ともに愛知・至学館高)
記録を調べていくと、2009年の全国少年少女選手権(東京)で、泰成が6年39kg級で勝ち、泰葉が女子4年33kg級で優勝しているが、成葉は女子30kg級で2位に終わって(決勝の相手は昨年の55kg級全日本チャンピオンの南條早映)、惜しくも3人による同時優勝ならず。
中学では、2014年に全国中学生選手権と全国中学選抜選手権の2大会で姉妹が同時優勝しているが、泰成はすでに高校に進んでいた。
その間の2013年からJOC杯で3人が同時に闘うことになったが、2015・16年に泰葉が優勝したものの、他の2人は優勝に恵まれなかった。インターハイでは、2015年大会だけが3人が同じマットに上がっているものの、この時は3年生だった泰成の2位が最高。
全日本レベルの大会でも3人の同時出場はあるが、壁は高く、まだ3人のだれも優勝は手にしていない。地方レベルの大会でも、3人の同時優勝は、3人とも「記憶にない」-。
■決勝で高校三冠王者を破って優勝!…兄・泰成
今年は3人が同時に出場できる最後のJOC杯。まず69kg級の成葉が、決勝で最近負け続けだった森川美和(東京・安部学院高)を破り、国内では2014年全国中学選抜選手権以来の優勝を達成。続いて今月初めのジュニアクイーンズカップで優勝していた72kg級の泰葉が順当に優勝した。
優勝を決め、専大陣営にガッツポーズの松雪泰成
松雪は「JOC杯の優勝は初めて。素直にうれしい」と喜びの声。決勝の相手は高校生だったが、「強いことは分かっていた。自分のレスリングをして勝つことだけを考えていた」と、気を引き締めた。タックルで先制しながら、第2ピリオドにタックルを受けて2-2へ。しかし、すぐにタックルで4-2へ。「相手との間合いを考えて練習していた。いいタイミングで入れた」とのこと。
終了間際にもタックル返しを受けて一瞬4-4となり、このままならラストポイントで負けるところだったが、すぐにバックを取り返して5-4。「もっと安全に闘うこともできたけど…。甘さかもしれませんね」と反省し、今後の課題とした。
妹2人が先に優勝し、特に67kg級の成葉が“天敵”を破って優勝したことは「刺激になった。(JOC杯では)3人が優勝できる最後のチャンスだったので、決めたかった」と言う。泰成も高校時代に全国制覇があり、1年生にして全日本大学選手権2位などの実績があるが、「双子姉妹」「(成葉が)オリンピック出場権獲得を目指す渡利璃穏のパートナーとしてカザフスタンへ同行」など、世間的には妹の方が注目を浴びているのが現実だ。
嫉妬心があるわけではないが、「(自分が)一番成績がないだけに、勝つしかなかった。兄の威厳を見せられた」と安堵の表情。今夏は世界ジュニア選手権(フィンランド)に挑むことになるが、「2月にデーブ・シュルツ国際大会(米国)に出て、シニアでは世界と実力差があることを感じた。ジュニアではどうなのか試してきたい」と話した。
■「特に競い合っているわけではないのですが…」
姉妹優勝は2年半ぶり。女子72kg級の泰葉(右)と67kg級の成葉
コーチから「気持ちで負けるな」と言われ、そのアドバイスをしっかり守れたことが勝因だろう。
順当勝ちした泰葉は「勝たなければいけない、圧倒的に勝つ、という気持ちでした」と余裕のコメント。3試合とも無失点のテクニカルフォールという内容に、「次の明治杯(全日本選抜選手権)も勝ちにいきたい」と、気持ちは上を向いている。
3人での優勝は「特に競い合っているわけではないのですが…」と苦笑い。「最後のチャンスだったので、よかったです」と結んだが、このあと、全日本選手権や全日本選抜選手権、あるいは世界での闘いでは何度もチャンスがある。
次に3兄妹で優勝するのは、いつ? 注目される松雪3兄妹の今後だ。