※本記事は日本レスリング協会に掲載されていたものです。
(文=樋口郁夫) グレコローマンで唯一優勝の清水賢亮。左は帯広北高・藤島忠監督、右は父の孝悦さん。
叔父とは、1998年長野オリンピックのスピードスケート500メートルの金メダリストの清水宏保さん(他に1000メートルで銅、2002年ソルトレーク大会の500メートルで銀。世界距離別選手権では金5個を獲得)。父の弟だ。「オリンピックや世界で勝つのは本当にすごいことで、尊敬しています。競技は違いますが、目標です」。偉大な叔父にわずかだが近づいたことは間違いない。
■練習環境は恵まれないが、コーチ、チームメート、そして父が熱心にサポート
2年前はカデットで優勝し、世界カデット選手権(ボスニアヘルツェゴビナ)でも5位入賞を果たしたが、その後は高校の全国大会の3位入賞はなく、優勝というより表彰台が久しぶり。「最近結果を残せていなかったので、本当にうれしい」という言葉に実感がこもる。
決勝で闘った昨年王者との一戦は「闘いづらい相手で、本当にきつかった」と振り返ったが、1回戦で大学選手相手に勝つことができ、気持ちが楽になって「前へ前へと出られたことが勝因」と振り返った。
2年前の優勝は、エントリーが4選手で1回戦の次が決勝。1回戦が相手の棄権で不戦勝となり、決勝の1試合のみを闘っての優勝だった。それに比べると、年上の大学選手2人を含む3試合を勝ち抜いての優勝。「気分は全然違います」と言う。 決勝で昨年の王者を破る
51歳。強豪大学の出身とはいえ、全国トップレベルとなった高校生との練習はきついものがあると思われるが、この大会にも駆けつけてくれた父の熱心さにこたえないわけにはいくまい。そんな思いが詰まった優勝だったようだ。
■トリノ・オリンピックでの叔父の闘いは生で観戦
長野オリンピックの翌年生まれなので、叔父の金メダル獲得は直接知らない。しかし、幼い頃にその快挙を聞かされ、テレビで映像を見て、2006年トリノ・オリンピックは現地で応援。今は年に数回しか会う機会はないが、会った時には「オリンピックを目指して頑張れ」などと激励してくれるという。普通の人以上に“オリンピック”への思いは強いはず。
大学への進学は「声をかけてくれるところがあれば」という状況。今年の国内外の成績次第では、多くの大学から声がかかることが予想される。世界ジュニア選手権(8月、フィンランド)はインターハイと重なるので出場は微妙で、不出場の場合はアジア・ジュニア選手権(6月、台湾)が実力を試す場。
いずれにせよ、オリンピック金メダリストと同じ遺伝子を持つ清水が、2年前以上の実力をつけて世界へ飛び立つ。